宝塚歌劇団の月組トップ珠城りょう、相手娘役美園さくらの退団公演「桜嵐記(おうらんき)」「Dream Chaser」が15日、兵庫・宝塚大劇場で開幕した。

物語の舞台は南北朝の動乱期。珠城は滅亡をたどる南朝の武将・楠木正行(まさつら)役。争乱で縁者を失い、敵討ちを誓う後村上天皇の侍女・弁内侍を美園が演じた。

珠城は父の遺志を継ぎ、弟と力を合わせて戦いに明け暮れる正行を熱演。桜の花が咲き乱れる中、弁内侍に別れを告げるシーンでは、はかない愛を表現した。

今作の公演ポスターには「限りを知り 命を知れ」と書かれ、タカラジェンヌの宿命にも通じる言葉だ。

珠城は開幕前のインタビューで「正行も、最後は負け戦と分かって出立する。私たちも、いつの日か卒業する日が来るのを分かった上で、それまでどう生きていくか。その中で、葛藤、出会いも別れもある」と共感。「お客様は、きっと、どうしても、私の退団と重ねてご覧になると思いますが、私はただただ楠木正行という人物を生ききるということに集中していきたい」と話していた。

次期トップ月城かなとは、正行の末弟・正儀(まさのり)役。正儀は「自分たちは何のために戦っているのか」を正行に問い詰めながらも、兄とともに戦いへと向かっていく。

長弟の正時は人気スター鳳月杏(ほうづき・あん)。次期トップ娘役の海乃美月は正時の妻・百合役を務めた。人気スター暁千星が後村上天皇、下級生時代から芝居巧者として知られていた風間柚乃は足利尊氏にふんした。

ショーは、「夢を追うひたむきな情熱」を音楽やダンスで華やかに表現。身長172センチの珠城は、男役として恵まれた体格を生かし、黒えんびやスーツなどを着こなしてファンを魅了。開幕前日の14日に行われた通し稽古では「すべてのみなさまに希望をお届けしたい」と意気込んでいた。

宝塚歌劇では、3度目の緊急事態宣言の発令により、宝塚大劇場の花組公演など、全公演が4月26日から中止。宝塚大劇場では、5月10日に花組公演千秋楽を無観客ライブ配信で上演したが、有観客公演としては今回の月組公演が再開になる。

再開にあたって、予定通り、今作から出演者の減員も終了し、全生徒が出演し、新人公演も再開される。

宝塚大劇場は6月21日まで。東京宝塚劇場は7月10日~8月15日の予定。