日本で活動する米国生まれのシンガー・ソングライター、ネルソン・バビンコイ(35)が今日1日にシングル「この手に抱きしめたい」を配信リリースする。同曲は昨年4月に歌手加藤登紀子(77)が発表、コロナ禍で傷ついた人々に向けてYouTubeでアップして話題を呼んでいた。バビンコイは英訳バージョンを歌って、日本から世界へとアピールする。

バビンコイは「『コロナは日本だけの問題だけではなく、世界共通の問題。そういう意味も含めて、世界中の人に歌ってもらいたい』という加藤登紀子さんの思いがありました。それで、今回の企画となりました」と説明する。

バビンコイは米国カリフォルニア州バーバンク市生まれ。01年、15歳の夏休みにバーバンク市と姉妹都市提携を結ぶ群馬県太田市に2週間の交換留学生で初来日した。その後、独学で日本語を学びながら名門カリフォルニア大バークリー校に進学。在学中に1年間、慶大に留学して路上ミュージシャンとして活動した。「東京の三軒茶屋の寮に住んで、三田の慶大に通って、スピッツ、ミスチルなどの歌を路上ライブで披露。最高の生活でしたね」と振り返る。

音楽事務所からスカウトを受け、デビューの予定も決まっていたが、就労ビザが下りずに米国に帰国した。「その後、日本の友達の誕生日プレゼントとして、SMAPの『オレンジ』を歌って欲しいとリクエストがあった。その動画をYouTubeになんとなくアップしてみたら、なんか外国人が日本語で歌ってるぞって、コメントやメッセージが一杯来ました」。07年に再来日してフジテレビ「Hey!Hey!Hey!」に出演するなど、タレント、ミュージシャンとして活動してきた。

米津玄師が作りFoorinが歌って19年のレコード大賞に輝いた「パプリカ」の訳詞や、SEKAI NO OWARIの英語楽曲の作詞・歌詞協力を手掛けていたことから、加藤の目に止まった。バビンコイは「僕は、ただ言葉を英語にするだけじゃダメだと思っている。曲の歌詞を自分の体の中に取り込んで、それを英語で表現する。自分で文化通訳と呼んでいます。加藤さんと会って、話をさせていただきましたが、お作りになる曲は本当に心に響いてきて、本当に一生に残る経験です」と言う。加藤は今日1日にリリースするアルバム「花物語」に「この手に抱きしめたい」を収録。英語バージョンのバビンコイの曲を「素晴らしい歌とアレンジで、すごく大きなスケールで生まれ変わった感じで、本当に楽しみ」とエールを送っている。

バビンコイと言う名字は「母方がバビンで、父方がコイ。日本で言えば『鈴木-田中』じゃないけど、ハイフンでつないでます。検索しても、出てくるのは僕だけ。気に入ってます」と笑った。 【小谷野俊哉】

◆ネルソン・バビンコイ 1985年9月27日、米国カリフォルニア州バーバンク市生まれ。01年8月、群馬県太田市に交換留学生として初来日して2週間滞在。カリフォルニア大バークリー校に入学して東アジア言語・日本語学科で卒業。在学中に慶応大に1年間留学して、日本語能力試験1級を取得。07年10月来日して、日本で活動開始。特技はバスケットボール、ゲーム、ギター。177センチ、73キロ。