米ニューメキシコ州サンタフェ郊外で撮影中だった新作映画「Rust」のセットで21日、小道具の銃を暴発させて撮影監督が死亡し、ジョエル・ソウザ監督(48)が負傷する事故を起こした米俳優アレック・ボールドウィン(63)が、翌朝ツイッターを更新して事故後初めてとなる声明を発表した。

2回に分けた投稿でボールドウィンは、「妻であり、母であり、私たちの素晴らしい同僚であるハリーナ・ハッチンズさんの命を奪った悲劇的な事故について、私のショックと悲しみを伝える言葉はありません。この悲劇がどのように起きたのか警察の捜査に全面協力しています。そして、ハリーナさんの夫と連絡を取り、彼と家族へのサポートを申し出ています。彼女の夫、息子、そしてハリーナさんの知り合いで愛していた全ての人を思い、心が痛みます」とコメントしている。

病院に運ばれ一時は危険な状態だとも伝えられていたソウザ監督は、21日夜に退院したと同作に出演している女優フランシス・フィッシャーがツイッターのコメントで明らかにし、同監督の代理人も病院から出たことを認めている。フィッシャーはまた、自身のインスタグラムにハッチンズさんとの2ショット写真を投稿して追悼のメッセージも寄せている。

事故が起きたのは21日午後1時50分頃で、同作のプロデューサーは「空砲が装てんされた小道具が誤発砲する事故があった」と説明しており、捜査当局は現在発射物の種類と発射の状況について捜査中だとしている。映画の撮影で実弾を使用することは禁じられており、通常は安全確認を行った上で弾頭がない空砲を使用するため、なぜこのような暴発事故が起きたのか、誰が銃を入手して管理していたのか、ボールドウィンに手渡したのは誰かなど多くの疑問が浮上している。捜査が継続中であることから、現時点でボールドウィンは逮捕も起訴もされていない。事故を受けて製作は中断されている。

ボールドウィンとソウザ監督の原案を映画化する「Rust」は、1880年代のカンザスを舞台に偶発的に地元の牧場主を殺害してしまったことで絞首刑を宣告された13歳の孫を救うため、ボールドウィン演じる悪名高い無法者が脱獄させて2人で逃亡する物語。ボールドウィンは主演と共同プロデュースも務めている。

撮影現場での銃の誤射による死亡事故は、今回が初めてではない。1984年には俳優ジョン=ヘリック・ヘクサムさんがテレビドラマ「トップモデル諜報員 カバー・アップ」の撮影中に自らの誤射によって死亡しているほか、93年には俳優ブルース・リーの息子であるブランドン・リーさんが「クロウ/飛翔伝説」の撮影中に他の俳優が撃った小道具の銃によって死亡する事故が起きている。リーさんを撃った俳優は遺族から民事訴訟を起こされたものの刑事訴追はされていないことから、ボールドウィンも今回の暴発事故で起訴される可能性は低いとみられている。(ロサンゼルス=千歳香奈子)