日本人離れしたボディーで80年代に脚光を浴びた女優烏丸せつこ(66)が、34年ぶりに映画主演する。

22年1月15日公開の「なん・なんだ」(下元史朗とダブル主演)で、結婚40年の夫に隠れ、長年にわたって愛人との関係を続けるしたたかな妻役を好演している。公開を前に日刊スポーツのインタビューに応じ、「ツッパリ女優」と呼ばれた毒舌は健在だった。

「2人の男を振り回す役は、いかにも烏丸らしいとキャスティングされたんでしょうけど、男たちやこの女性が抱えている過去はいかにも古くさい。(26歳下の)山嵜晋平監督にはさんざん言ったんだけど、結局変えてはくれなかった。終盤、夫に向けて『もうあんたの面倒はみないから!』とたんかを切るところは気持ち良かったですけどね」

主演作にも容赦ない。自身の波乱の半生からすれば、この女性の生き方も平凡に思えるのかもしれない。絶頂期の27歳に21歳上の映画プロデューサー田中寿一氏と結婚。略奪婚だった。結婚9年目に夫が事業に失敗し、46歳の時2人の娘を抱えて離婚した。

「一番つらかった時期ですね。食べるために2時間ドラマの仕事をもらった。でも、そこでは若手の映画監督が映画の撮り方で懸命に仕事をしていたんですね。デビューの頃には分からなかった映画の面白さをその時に知ったんですね」

意に染まない作品も少なくなかった。「年齢的に枯れた部分を求められるようになっていたし、寿一さんはいい人だけど、子どもたちには何もしてくれなかった」。独り育てた娘たちも30代となり、自身は7年前に2歳下のレコードディレクターと再婚した。苦難を糧に今回の妻役の複雑な心境も巧みに演じた。「成長してないよ」と謙遜しながら「今が一番演じることが楽しいかも」と笑った。【相原斎】

◆烏丸(からすま)せつこ 1955年(昭30)2月3日、滋賀県生まれ。80年、第6代クラリオンガール。圧倒的なボディーで、ファッション史研究家から「彼女に衣装はいらない。裸が最高」と言われた。同年「四季・奈津子」翌年「マノン」と立て続けに映画主演。14年に再婚した現夫はディレクターとして坂本冬美、由紀さおりを担当。19年には「スカーレット」でNHK連続テレビ小説初出演。