映画監督の河瀬直美氏(52)が29日、エグゼクティブプロデューサーを務めた中国残留孤児の家族の絆を描く日中合作映画「再会の奈良」(ポンフェイ監督)の奈良先行公開記念舞台あいさつに登壇した。

総監督を務める公式記録映画「東京2020オリンピック(仮)」(6月公開)の編集作業の合間をぬって、地元のイベントに出席。公式記録映画について「ドキュメンタリーの中に生きる人たちが、たくさんの情熱を持って、そこに存在していた夏。勝ち負けだけではなく、この人たちのささげた情熱を深掘りしている最中です」と明かした。

同映画をめぐっては、密着取材を受けた昨年12月に放送されたNHKのBS1スペシャル「河瀬直美が見つめた東京五輪」に不確かな字幕があり、NHK側が謝罪する騒動になった。最後のあいさつでは「次の世代が受け継ぐと思うといいかげんなことはできない。自分の言うこと、行動がだれかを不幸にし、幸せにしたりするという重みを自分自身に刻みながら、みなさんとつながりたい。私の立場は決して偉くもないし、みなさんと同じ人です」。映画への思いを語る途中には、声を詰まらせ、目に涙を浮かべた。【松浦隆司】