世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭(フランス、17日開幕)事務局は2日(日本時間3日)、河瀬直美監督(52)が手掛けた21年の東京オリンピック(五輪)公式記録映画「東京2020 SIDE:A」(6月3日公開)を映画祭で上映すると発表した。そのことを受けて、河瀬監督が3日、配給の東宝を通じてコメントを発表した。

「この度は、カンヌ映画祭より公式招待を受けましたこと、大変嬉しく存じます。カンヌへの招待はこれまでコンペティション部門へのものだったので、今回、コンペではなく公式にカンヌが上映の機会を与えてくださったことに喜びを感じずにはいられません」

河瀬監督は、97年「萌(もえ)の朱雀(すざく)」で新人監督賞「カメラドール」を受賞。最高賞パルムドールを争うコンペティション部門には、03年「沙羅双樹」、07年「殯(もがり)の森」、11年「朱花(はねず)の月」、14年「2つ目の窓」、17年「光」を出品し「殯の森」で審査員特別大賞を受賞。また新型コロナウイルスの感染拡大の影響で開催を見送った20年の同映画祭でも「朝が来る」が、公式ラインアップ「カンヌレーベル」に選ばれている。そのことを踏まえての、喜びのコメントをつづった。

その上で、映画史に残る名作を復刻版で紹介することを目的に、カンヌ映画祭に04年に立ち上げられたカンヌクラシック部門での上映決定を喜んだ。

「と申しますのも、本作『東京2020』はドキュメンタリー作品であり、公式映画としてオリンピック文化遺産財団で永久に保存されるという作品でもあります。そして今回、世界最高峰の映画祭カンヌが文化遺産としての映画を選ぶ部門である『カンヌクラシックス』に、本作『東京2020』を、新作であるにも関わらず選んでいただいたのは、この映画に託された時代の証言を、未来永劫100年先までも、語り伝えたいと評価してくださったということの表れだと感じています。今回は今年のカンヌのラインアップが発表されてから、2週間以上時間が経った先週末、最高責任者のティエリーフレモーから直接、招待の連絡が入りました」

「東京2020 SIDE:A」は、18年秋に東京オリンピック(五輪)公式記録映画の監督に就任した河瀬監督が、20年開催予定の大会に向けて取材を続けたがコロナ禍で1年延期。その後も取材、撮影を継続し、21年7月の開幕前にバッハ会長に2本立て構想を提案。総記録時間は5000時間に及び、選手を中心とした関係者を描いた「東京2020 SIDE:A」と、大会関係者、市民、ボランティア、医療従事者ら非アスリートたちを描いた「-SIDE:B」と、異なる視点からの2作品を製作。「-SIDE:B」は6月24日と2作連続で公開する。河瀬監督は、そのことを踏まえ

「パンデミック下で、自らの場を奪われたさまざまな人々の想いを紡ぐように、『人生の金メダリスト』とは…をテーマに、東京2020に集ったアスリートの姿を通して表現した本作。それが、記念すべき75回目の節目を迎えるカンヌからの正式招待を受けたことは、この先の未来へ大きく拓いてゆく形として、最高の舞台を用意されたのだと、その誉れを関係各位に感謝と共に届けたいと思います」と出品決定を改めて感謝。そして「新緑の頃、若葉が柔らかな日差しにキラキラと輝く生命力、その光が世界の人々を照らし、ささやかでも、かけがえのない日々を慈しむことができますように。祈念すると共に、ご報告申し上げます」と締めた。

河瀬監督とカンヌ映画祭の縁は深く、15年は樹木希林さんの主演映画「あん」が、ある視点部門のオープニング作品として上映されるなど“カンヌの申し子”として知られる。カンヌ映画祭サイドも、映画祭が見つけた世界の才能として、河瀬監督を高く評価しており、13年にはコンペティション部門の審査員も務めている。