河瀬直美監督(52)が5日、都内で東京五輪公式記録映画「東京2020 SIDE:A」会見を開いた。

質疑応答の中で「国内で賛否両論あるが、受け止めは?」との質問も飛ぶ中、同監督は「今、見られなくても、いつか必ず見て欲しい」「日本人が世界に誇れる姿を、反対派の人も含めて」などと語った。

会見の冒頭で、河瀬監督は「この時代に、この映画を誕生させられて、うれしい」と笑みを浮かべた。その上で、世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭(フランス)でクラシック部門に選出され、5月25日(日本時間26日)に上映されたことに触れ「映画を中心にして世界中の人が集い、新たなアイデア、出会いが生まれているのを見て、私たちの映画を加えていただいたのは誇りに思うし、たくさんの人が待っていたと迎えてくれた。感無量…1番、最高のお披露目が出来たんじゃないか」と語った。

一方、国内ではカンヌ映画祭前の5月23日に都内で行われた完成披露試写会の際、会場のTOHOシネマズ六本木ヒルズ前に横断幕を出して反対の声を上げる一団が現れるなど、賛否両論があることは否めない。質疑応答の中で、3日の封切り以降の、国内の反応や興行の状況を含めた受け止めは? との質問が河瀬監督に飛んだ。

河瀬監督は「東京2020 SIDE:A」が初日を迎えた3日の直前まで、大会関係者や一般市民、ボランティア、医療従事者などの非アスリートたちを描いた「-SIDE:B」(24日公開)の製作の追い込みをしており「ほとんど寝ておらず、作業場で、ずっと過ごしていた。公開初日に、字幕が入っていない段階の『B』の初号(試写)をしていた」と説明。その上で「SNSの投稿を詳しく見ているわけではないので、皆さん…いわば知らない人の、インターネットを通した評価というのは、ほとんど見ておりません。見ている時間がないというか。別のプロジェクトのために(地元の)奈良に戻り、先ほど、ここに到着した状態なので」と近況を語った。

その上で、周囲の人々の感想を披露。「近くの人で、見たよというメッセージをしてくれている人からの感想を聞いているだけなんですけれど…すごい可能性を感じています、20~70代までの老若男女問わず『自分も、もっと頑張らな、あかんな』と、同じことを言ってはります。『頑張らな』という言葉の向こうには、私たちも人生の金メダリストになれるんだとというような思いがある」などと語った。そして「映画の中に、さまざまな光り輝くかけらが、この映画の登場人物、それぞれにあって…それを、最後の風君の曲が抱き締める」と、藤井風(24)が手掛けたメインテーマ「The sun and the moon」を改めて評価。「そこに、すごい可能性を感じていて。(封切りからの)3日間のこと、日本国内のことだけでなく代々、長い時間をかけて、その先の人たちに届いていくんだなという、私自身は、そういう気持ちです」と語った。

河瀬監督は、最後に「東京五輪を、多くの子どもたちに生で見せたかった。でも、コロナ禍があって見せられなかった。見せられなかった姿を、私は出来れば劇場で、映画で見て欲しい。今、見られなくても、いつか必ず見て欲しい」と訴えた。その上で「ここ(映画)には時代の記憶が刻まれています。私たちが何を選んで、どのように東京五輪を開催し、閉幕まで導いたかという姿…。日本人が世界に誇れる姿を、反対派の人も含めてです。私たちは、この時代を精いっぱい生きたという…みんな、今は苦しい時代かも知れないけれど、頑張りたいと思ってもらいたいです」と、かみしめるように語った。