阿部寛(58)が22日(日本時間23日)米国で開催中のニューヨーク・アジアン映画祭で、スター・アジア賞を日本人として初受賞した。同賞は、20周年を迎えた同映画祭で、アジアで最も活躍している俳優に与えられるもので、過去に韓国の俳優イ・ビョンホンや、是枝裕和監督の映画「ベイビー・ブローカー」に出演のカン・ドンウォン、香港のアクション俳優ドニー・イェンら、世界的にも有名な名優が受賞してきた名誉ある賞だ。

日本人で初の受賞となった阿部は、英語で堂々とスピーチした。

「どうもありがとうございます。この素晴らしい賞をいただけて本当にうれしく思っています。また、今世界が大変な時期に、こうしてニューヨークに来られて最高です。今日ここ、ニューヨークアジア映画祭に来てくださった皆さんの顔が見られて、今ものすごく幸せに思っています。それから、この映画祭に尽力くださったスタッフの皆さんにもお礼申し上げます。また、私のこれまでの作品に手掛けてくださった、全ての監督、俳優の皆さん、スタッフの皆さんにもここで改めてお礼を言わせてください。本当にどうもありがとうございます」

同映画祭では、阿部の主演映画「異動辞令は音楽隊!」(8月26日公開)がワールドプレミア上映された。日本アカデミー賞最優秀賞受賞など、20年の日本映画界を席巻した「ミッドナイトスワン」を手掛けた内田英治監督が、YouTubeで偶然、目にした警察音楽隊のフラッシュモブ演奏の映像から着想を得て、オリジナルで脚本も手掛けた。阿部は劇中で、犯罪捜査一筋30年の鬼刑事ながら、突然警察音楽隊へ異動辞令を命じられる成瀬司を演じた。

上映後の質疑応答で、阿部は「あまりに素晴らしいドラマーでしたが一体どのようにトレーニングしてあそこまでうまくなったのですか?」と質問を受けた。「ドラムは今まで全くたたいたことがなくて、楽器自体を触ったこともなかったのです。それで最初はこの台本をいただいた時、ちょっと断りたいなあと思ったんですけど、監督も実際ドラムなどをやったことがなくて、監督と一緒に挑戦していくという、一緒に作っていくという。ぜひ一緒に仕事したかったので、それで引き受けました」と笑いながら語った。

内田監督は「この作品を小説として先に書いたそうですね。小説を書いている時から阿部さんを主人公にしようと考えていたのですか?」と質問を受けると「小説は映画とほぼ同時に、先月発売されました。脚本自体は5年以上前から書いているものがあって、オリジナルの脚本というのは日本ではなかなか作りづらいというのがあって、またドラムをたたける俳優さんも少ないですし、なかなか進まずに5年6年かかって」と経緯を振り返った。その上で「去年、阿部さんと撮影できたんですけど。やっぱりこういったタイプの役は難しいので、なかなか役者がいなかったんですけど、その中で阿部さんが目の前に現れてくれて、作品が無事、完成しました。多分ドラムの練習に関しては想像以上にすごく苦労したんじゃないかなと思います」と語った。

また同監督は「僕は、30年くらい前にニューヨークの五番街にあった”ナニワ”という日本食レストランで、皿洗いのバイトをしていました。なので本当に懐かしい街なんです」とニューヨークと自身の関係について明かした。その上で「今回、阿部さんが主演で映画を撮らせていただきました。皆さんご存じのように阿部さんは本当に特別な俳優なので、現場で撮影しながら主人公は阿部さんしかいないなあという気持ちで撮影していました。NY市警にも有名な音楽隊があるので、僕の夢は、阿部さんが、NY市警の音楽隊と対決する『パート2』を考えています」と第2弾の構想を披露した。

阿部は質疑応答の最後に、日本以外の国を含めた今後の作品の予定について聞かれ「次の作品は…今回の役は、強い男の役でしたが、次は本当に何げない、オタク的な人間の役を今やることになっています。それは、もしかしたら海外の人も見ることができる作品になるかもしれません」と答えた。「また海外の映画にもぜひ出てください」とリクエストされると「ありがとうございました」と笑みを浮かべた。