年内でコンサート活動を終了する歌手加山雄三(85)が8日、横浜港で、クルーズ船「飛鳥II」船内で開催するラストライブ出航前に取材に応じ、60年以上にわたるステージ活動を振り返った。史上最高齢となる大みそかのNHK紅白歌合戦出場も発表され、そのステージが最後のライブパフォーマンスとなる。今日9日に船上でライブを行い、10日に帰港。18回目の紅白で有終の美を飾る。

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「どうもこんにちは。ようこそ、お集まりいただきましてありがとうございます」。船長の制服姿で現れた加山は、優しい笑顔を見せた。海を愛する男が最後の場に選んだ、00年から名誉船長を務めている飛鳥IIの船上。「最後でさみしいなという感じはあるけど、しょうがないよね」と、しみじみ言葉を重ねた。

そして「始まりがあれば終わりもある。どこかで線引きをしておかないと、困っちゃう。自分でケジメをつけることは好きだからね。なんとなく辞めるんじゃなくて、人の前で歌うのはこれで最後って決めた方が、清々するんじゃないかな」と出航前の心境を明かした。

クルーズライブは、芸能生活40周年を迎えた00年にスタートし、10年からは、ほぼ毎年実施。6~8日の第1便ではすでに歌声を届けた。「お客さんの反応は普段と変わらなかったけど、普通のまんまの方がいいよね」と“いつも通り”のラストライブを強調した。

歌手業だけでなく、ギタリスト、作曲家、俳優として、日本芸能界の最前線で波に乗り続けてきた。ただ近年は19年5月トレーニング中に腰を圧迫骨折。同11月には脳梗塞を発症し、20年8月には誤嚥(ごえん)からの脳内出血を患った。コンサートを開催できるまで復活したが、今年6月、年内でのコンサート活動引退を発表。音楽活動の大きな柱の引き際を、潔く決断した。

ライブは年内で引退するが、音楽活動は継続する意向だ。「人前で歌うステージは終わりだけど、そこから先、音楽活動は生涯の親友であるからどんな扱いであろうとね。僕の作った曲を誰かが歌ったり、そういう音楽の活動は関わっていきたいなって思う。音楽は国籍、年齢が関係ない。良いものはいいからね」。若大将らしく、さわやかに笑った。【佐藤勝亮】