22日に最終回を迎えるフジテレビ系連続ドラマ「silent」(木曜午後10時、15分拡大)の脚本を務める生方美久氏(29)が日刊スポーツにコメントを寄せた。同時間帯にツイッターでは「#silent」がトレンド入りするのが定番化。同局の「見逃し配信」累計の最高記録も更新した。ロケ地として使われている小田急世田谷代田駅周辺は“聖地巡礼”客でにぎわっている。話題沸騰中でも、生方氏は冷静だった。

「ヒットの理由というのは分かりません。私としては書きたいものを書いたという感じです。プロデューサーをはじめとする制作陣が自由気ままにしている私をひっそりと、ヒットする形に誘導してくれたんだと思います」

主演の川口春奈(27)演じる主人公の青羽紬と、Snow Man目黒蓮(25)が演じる佐倉想の2人が8年ぶりに再会するところからストーリーは動きだす。想は「若年発症型両側性感音難聴」を患い、聴力のほとんどを失っていた。劇中では「ろう者」と「中途失聴者」の間で揺れる想を丁寧に描いている。

第6話では、聴力の低下を自覚している大学時代の想が「ろう者」の桃野奈々(夏帆)と筆談するシーンがある。奈々が力強くペンで書き込んでいく。

「私は生まれつき 耳が聞こえない でも幸せ」

「音がなくなることは 悲しいことかもしれないけど 音のない世界は 悲しい世界じゃない」

「私は生まれてから ずっと悲しいわけじゃない 悲しいこともあったけど うれしいことも いっぱいある」

「それは聴者もろう者も同じ あなたも同じ」

想は筆談を経て奈々に心を開くも、奈々が喫茶店に「ろう者」の友達を勝手に呼んだことに対して過敏に反応してしまう。奈々は「ろう者」の友達をつくってほしかったと意図を説明したが、想は「俺はまだ聞こえるし」と喫茶店をあとにし、複雑な胸中を明かした。

「同じだと言ってくれて、あんなに安心したのに。都合よく、自分は違うと線を引いた。聞こえる自分が忘れられなかった。聞こえる人とも、聞こえない人とも距離をとった」

想の複雑な心境を脚本で繊細に描くことに成功している生方氏は、元看護師。群馬大医学部保健学科看護学専攻で、卒業後は県内や都内の医療機関にも務めていた。

「個人的にろう文化や手話について学びましたが、1年足らずの学習にすぎません。ドラマの中のリアリティーは私の力ではなく、手話監修や医療監修で携わってくれた皆さんの力です」

第10話では、想が紬に「一緒にいるほど、好きになるほどつらくなっていく。声が聞きたい。もう聞けないなら、また好きになんてならなきゃよかった」と思いを伝えた。最終回の脚本に込めた思いを明かした。

「自分以外の人間は全員他人なのですべてをわかり合えるわけがない、ということです。その諦めを持ったうえで、人と人とが一緒に生きていくには何が必要なのかを自分なりに、そしてなによりsilentに登場するキャラクターなりの答えを出しました」

変化したものも、それでも変化しないものもある。8年という時を経て再び出会った2人がたどりつく結末とは。紬と想が織りなすストーリーから目が離せない。

◆生方美久(うぶかた・みく)1993年(平5)5月10日、群馬・富岡市出身。高崎商大付から群馬大医学部保健学科看護学専攻へ進学。大学卒業後、県内や都内の医療機関で看護師として働きながら脚本を学ぶ。昨年にフジテレビヤングシナリオ大賞受賞。同賞は生方が最も尊敬している脚本家の坂元裕二氏(東京ラブストーリー)を輩出している。大賞受賞作の「踊り場にて」は瀧本美織の主演で映像化され、昨年末に同局系で全国放送された。

◆フジテレビ「見逃し配信」累計の最高記録更新 今年1月期の「月9」連続ドラマ「ミステリと言う勿れ」(全12話)の累計が4222万回再生だったが、「silent」は8話時点で、4600万回再生を超えた(※TVer・FOD無料・GYAO!の合計値。『見逃し配信』再生数は放送から次回放送まででカウント。再生数は、ビデオリサーチの調査による)。