フジテレビ系の長寿人気アニメ「サザエさん」(日曜午後6時30分)で、タラちゃんことフグ田タラオ役を演じた声優貴家堂子(さすが・たかこ)さん(本名・堀内堂子)が5日に死去した。87歳だった。
69年10月の放送開始から約53年間、タラちゃんの声を担当した。19年には、同じく番組開始からフグ田サザエを演じる加藤みどり(83)とともに「最も長くテレビアニメシリーズにおいて同じ役を演じ続ける声優」として、ギネス世界記録に認定された。26日放送分まで、貴家さんの声のタラちゃんという。
子供のころから見ていたアニメの声が変わると、親しんだキャラクターそのものも変わってしまったように感じる。同じ声優が長い間、同じキャラクターを演じるからである。
「サザエさん」では、初代の磯野フネを麻生美代子さんが放送開始から、89歳で降板する15年9月まで46年間担当した。和服姿の、やさしく落ち着いた口調で、日本の母親像とまで言われた。18年に92歳で亡くなった。
サザエさんの夫・フグ田マスオ役の増岡弘さんは2代目として、78年から19年まで41年間担当した。82歳という高齢を理由に降板した。翌年の3月に直腸がんのために死去した。直後の番組で、逝去のテロップが流れた。
磯野カツオの親友で初代の中島弘役を演じた白川澄子さんは、中島初登場の71年から15年まで44年間、担当した。同年11月にくも膜下出血で自宅で死去した。80歳だった。翌日に「サザエさん」の収録を控えていたという。
2代目磯野カツオ役の高橋和枝さんは、放送開始直後から98年まで約29年、担当した。同年5月の収録中に、骨髄異形成症候群で倒れ緊急入院した。伊佐坂ウキエ役で収録現場にいた現カツオ役(3代目)の富永みーな(56)が代役を務めた。急きょのことで、事前の告知なしにカツオの声が変わったため、視聴者から問い合わせが殺到したという。翌99年3月に70歳で死去した。
磯野波平役の永井一郎さんは、放送開始から14年までの45年間、日本の父親像と言われた波平を演じた。14年1月に仕事先で心不全のため82歳で急死したための交代だった。
視聴者がキャラクターと声を一体と感じるように、演じる声優もキャラクターと一体となっている。
カツオ役の高橋さんは入院先で「高橋さん」と呼び掛けられても反応しなかったが、「カツオ」と呼ばれると「は~い」と小さな声で答えたという。
高橋さんの告別式は桜が開花した3月下旬に行われた。約29年間、父親役だった永井さんが波平として弔辞を読んだ。
波平 カツオ、親より先に逝くヤツがあるか…カツオ、桜が咲いたよ。散歩に行かんか…
永井さんは弔辞について「カツオと別れを告げるということの方が大きかったと思います」と話した。
その永井さんの告別式では、サザエさん役の加藤みどりと、3代目カツオ役の富永みーなが2人で別れを告げた。
サザエ 父さん。45年間、行ってらっしゃいの声で1日が始まったのよね。
カツオ でももうお帰りはないんだよね。お父さん、大好きです。もっといっぱい一緒にお風呂に入りたかった。もっとしかられたかった。
サザエ お酒に合う料理を作って、父さんに「これはうまい」って褒めてもらいたかった。でもね、父さん、きっとその辺で、いつもいつも私たちを見守っててくれているよね。
富永 そう思う。
2人 磯野波平の永井一郎さん、さようなら。
「サザエさん」が今も国民的なアニメ番組であるのは、長谷川町子さんの原作の力がもちろん大きい。それをもとに、キャラクターと声優が、時を経ても変わらぬ家族の絆、温かさ、大切さを感じさせてくれるからなのだろう。放送開始からの声は、加藤みどりのサザエさんだけになったが、これからもずっとずっと楽しませてほしい。【笹森文彦】



