宝塚歌劇団の宙組トップ真風涼帆と、相手娘役・潤花の退団公演「カジノ・ロワイヤル~我が名はボンド~」が11日、兵庫・宝塚大劇場で開幕した。

完熟期を迎えた現役最長トップが、男役としての集大成をぶつけるサヨナラ作。スーツを、トレンチコートを、見事に着こなし、ハットに銃…小物も操り、真風流のジェームズ・ボンドを仕上げてきた。

「最終的に、私のボンド像がお客さまにどう映るか。皆さまに委ねたい」

開幕前の取材でも、こう言い、稽古に励んできた真風が、ついに最後の公演の初日を迎えた。

イアン・フレミングの「007/カジノ・ロワイヤル」をもとに、小池修一郎氏が脚本・演出を手がけた一本物。真風と同時退団する相手娘役の潤花は、小説にはないオリジナル・キャラクターで、ロマノフ家の末裔(まつえい)ながら、学生運動に身を投じるデルフィーヌにふんした。

真風の2人目相手役に迎えられ、添い遂げて退く潤は「がむしゃらな子供のような時代から、大人になっていく課程を表現したい」と言い、真風に寄り添いつつラスト作を作り上げた。

真風演じるボンドと敵対するKGB諜報(ちょうほう)部員ル・シッフルには、次期トップに決まっている芹香斗亜がふんし、近年磨いてきた敵役芸で好演。人気スター桜木みなとは、潤ふんするデルフィーヌの恋人、過激派の学生として役柄を熱演した。

今作では紫藤りゅうら主力スターと、宙組発足時から組メンバーとして支えてきた寿つかさ組長らも、真風らと同時退団する。

寿はロマノフ家末裔のロマノフ大公にふんし、劇中でも、次世代スター候補の瑠風輝らと、サヨナラを思わせるセリフのやりとりも見せた。

前日10日夕、最終の通し稽古を終えると、寿は「卒業公演、どうぞよろしくお願いいたします」と言い、真風にあいさつのバトン。真風は「千秋楽の日まで、大切につとめて参りますので、スタッフの皆さまも、どうぞよろしくお願いいたします」と感謝の思いを伝え、完走を約束した。

宝塚大劇場は4月17日まで。東京宝塚劇場は5月6日~6月11日。真風は、17年11月のトップ就任から在位約5年7カ月、本拠地通算9作目で男役に別れを告げる。