黒柳徹子(89)の自伝的な代表作「窓ぎわのトットちゃん」が、初めて映像化されることが19日、分かった。

「本を読んでくれた皆さんの頭の中にある映像の方が良いものなんじゃないか?」と映像化の話を全て断ってきたが、原作が出版された1981年(昭56)に生まれ、アニメ「ドラえもん」シリーズなどを手がけた、シンエイ動画の八鍬新之介監督からの、3年にわたる熱烈なオファーを受け続けアニメ映画化にGOサインを出した。今冬の公開に向け鋭意、製作中だ。

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出版から40年を経て「窓ぎわのトットちゃん」がアニメ映画化される。続編の「トットチャンネル」は87年に斉藤由貴主演で実写映画化され、同作と続編の「トットひとり」を原作に、満島ひかりが主演したNHKドラマ「トットてれび」は16年に放送も「窓ぎわのトットちゃん」だけは、黒柳は映像化を全て断った。「ものすごくたくさんの映画監督から映画にしたいと依頼がありました。よく冗談で言っているのですが、あの黒澤明監督以外のほとんど全ての映画監督から、ありがたいことにお手紙をいただいたのを今でも覚えています」と振り返った。

アニメ化の話も実現してこなかったが、16年に八鍬監督から打診が届いた。同年は海外ではシリアの内戦、国内でも相模原市の津久井やまゆり園での殺傷事件が報じられていた。出版年に生まれた同監督は「暗い出来事に触れる中でアニメを通して社会に貢献できないだろうかと考えるようになりました。そんな時に出会った『窓ぎわのトットちゃん』には生と死、戦争と平和、思いやりと差別など相反するテーマが、世界中の誰もが理解できるみずみずしい子どもの言葉で雄弁に語られていました」とほれこみ映画化を熱望した。

黒柳は、キャラクターデザインを提案し続けた八鍬監督が手がけた台本の初稿が19年末に出来上がると、その熱意に心が動きアニメ映画化を認めた。キャラクターデザインは「ドラえもん」などを担当し、水彩画のようなタッチで子供を描くことに定評がある金子志津枝氏が手がけた。原作のイラストを描いた、いわさきちひろさんも水彩画を用いた技法で知られ、通じるものがある。黒柳は「アニメーションであれば若い方々がご覧になっても楽しめるかもしれないと思いました。最近は世界情勢がいろいろ変わってきているので、映画を見た若い世代の皆さんに『面白かった!』と思ってもらえるといいなと思います」と期待した。

◆黒柳徹子(くろやなぎ・てつこ)本名同じ。1933年(昭8)8月9日、東京・乃木坂生まれ。トモエ学園から香蘭女学校を経て、東洋音楽学校(現東京音大)声楽科に進学。卒業翌年の53年にNHK放送劇団に入る。文学座研究所で2年学んだ後、米ニューヨークのメリー・ターサイ演劇学校に進む。「窓ぎわのトットちゃん」日本語版の印税で社会福祉法人トット基金を設立しプロの、ろう者の俳優の養成などに尽力。84年からはユニセフ(国連児童基金)親善大使として世界の貧困地域を訪問。

◆「窓ぎわのトットちゃん」 第2次世界大戦終戦前の激動の時代を背景に、黒柳が自らの幼少期を描いた物語。小学1年生のトットちゃんは落ち着きがないことを理由に小学校を退学になり、東京の自由が丘に実在したトモエ学園に転校。当時は珍しい子どもの自主性を重んじる教育を掲げた同校での、恩師の小林先生や友人たちとの交流を描いた。国内の累計発行部数は800万部超。英語、フランス語、中国語、ヘブライ語など20以上の言語で翻訳され、全世界累計発行部数も2500万部を超えた。