9日に食道胃接合部がんのため89歳で亡くなった、元参院議長で宝塚歌劇団出身の女優だった扇千景(おうぎ・ちかげ、本名・林寛子=はやし・ひろこ)さんの葬儀・告別式が27日、東京・増上寺で行われた。

小泉純一郎元内閣総理大臣、片岡愛之助、藤原紀香夫妻、加山雄三ら、生前に仕事を共にした、歌舞伎、芸能関係者、政治家など多くが駆けつけた。

祭壇は扇さんらしさを感じる白やピンクのコチョウランやトルコキキョウ、カーネーションで扇のイメージと柔らかさを表現。上段に優しくほほ笑む遺影と遺骨が安置され、中段に旭日大綬章、桐花大綬章、先日叙された、従二位の勲章が飾られた。会場外では宝塚歌劇団を象徴する「すみれの花咲く頃」が流れた。

法号は女優、国会議員としての活躍と社会への貢献度から、安らかな悟りの境地を得られるよう願い、本名の「寛」を加えて華扇院妙慧日寛清大姉(かせんいんみょうえにちかんせいたいし)と授与された。

喪主は長男中村鴈治郎(なかむら・がんじろう、本名林智太郎=はやし・ともたろう)。鴈治郎、次男中村扇雀、2人の孫も歌舞伎俳優。4人は開式前に取材に応じ、鴈治郎は「母は母でありましたけれども、偉大な人であったんだなと思います」。

葬儀では「原点は宝塚。25年以上の議員生活、女優よりも議員・政治家だったことが天職であると感じております。女優、議員、女房、最後は母を全うした人生だった。母は世界一の父のファンだったと思います」と喪主としてあいさつした。

次男の扇雀は「89歳、天寿を全うしたんだと思います。父の元に『まだ呼ばないでね』なんて言っていましたけども、追うように。多分早く父の元へ行きたかったんだなと思います。国会議員は母の天職。全うできて、歌舞伎役者の女房としても全うできて、本当に希有な人生。十分に納得して旅立ったと思います」と悼んだ。

孫の中村壱太郎も「厳しい歌舞伎の世界にいることを見守ってくれて励ましてくれた。悲しさより感謝を持ってここに立っています」。中村虎之介は「残された自分たちは祖父や祖母が築き上げた偉大な功績に恥じないようにしないといけない。おばあちゃんと1回も呼んだことがない。あんなに自分の意志を持っている人を見たことがないので、孫として尊敬していた。自分の力を強く持った祖母のような人間になりたいと思っています」と話した。

また、小泉元内閣総理大臣は弔辞を読み上げ「未来に走り抜いた先生だった。空から日本と国民を見守っていただきたい」と最後のお別れを告げた。岸田文雄首相もご焼香に訪れた。