野村萬斎(57)が6日、東京・LINE CUBE SHIBUYAで行われた「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」オープニングセレモニーに、監督として登壇した。

萬斎は、5人の人気俳優が短編映画の監督に挑戦するプロジェクトの第3弾「WOWOW アクターズ・ショート・フィルム3」で監督作「虎の洞窟」を製作した。365日の準備期間をかけ、48時間で撮影し、25分以内にまとめ、かつ監督を務めた俳優が1シーンでも出るのが条件。「苦労したのは、時間との闘いでしたかね? 2日間…盛り込みすぎちゃった。しかも(撮影場所が)外も多かったし、交差点を選んだのが大変で。車が通る度に『ちょっと待った! 』みたいな…スリリングで楽しかった」と撮影を振り返った。

物語は「ハムレット」と「山月記」をもとに、孤独な青年の心象風景を描いた。社会に居場所を見いだせない男が、ある日、不思議な声に誘われて外に駆け出していくストーリーで、男を窪田正孝が演じた。萬斎は脚本の着想点を聞かれ「僕は、主に演劇をやっているので、自分がやってきた作品の中から取り上げてみようというのが、もともとの発想。ある朝、早起きしてパチパチと(パソコンを)たたき始めたら脚本が出来上がった。これでいいのかな? というところから始まった」と明かした。

主演の窪田について聞かれると「トラが出てくるという時に、お金をかければCGで、いくらでも作れるんでしょうけど、それは出さない。まさに窪田さんの演技が、トラになってしまった人間と見えるようにする…そこは、彼の演技のたまもので感謝しかない」と絶賛。演出については「うちの、けいこの能舞台で稽古し始めると、頼るものが何もないので相当、最初は戸惑われていた」と窪田の様子を明かした。そして「身体劇というか、体でトラを表現しようということになりましたし、舞台だと、どうしても遠くのお客さまに届けなきゃと思うのを『ちゃんとカメラで寄りますから』と、携帯電話でけいこ中、なめ回すように撮った、というステップを踏みました」と振り返った。

「WOWOW アクターズ・ショート・フィルム」は、萬斎のほか、高良健吾(35)が「CRANK-クランク-」、玉木宏(43)が「COUNT 100」、土屋太鳳(28)が「Prelude~プレリュード~」、中川大志(24)が「いつまで」で監督を務め、ジャパン部門に選出された「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」でグランプリを目指す。

「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」は、04年から米アカデミー賞公認となったアジア最大級の国際短編映画祭。インターナショナルカテゴリーが25周年、アジア・ジャパンカテゴリーが20周年を迎える本年は「UNLOCK」がテーマ。20年からアカデミー賞候補枠が4枠となっており、16年には「合掌」が米アカデミー賞短編実写部門でオスカーを獲得した。

萬斎はラストシーンについて「最後は、自分が舞うシーンなんですけど、みんながスタジオを片付ける爆音の中で1人、舞う…これも楽しい経験だった」と笑いながら振り返った。