野球未経験の俳優奥野壮(23)が、高校球児役に挑んでいる。オーディションを経て、10月15日開始のTBS系ドラマ「下剋上球児」(日曜午後9時)への出演が決まった。練習を積み、同世代キャストと最高の野球シーンを目指して奮闘する姿は、まさに高校球児。リアルを追求する撮影の舞台裏を充実感たっぷりに語り、俳優デビュー丸5年を迎えた心境も明かした。【遠藤尚子】
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「VIVANT」の大ヒットも記憶に新しい、TBSの看板ドラマ枠「日曜劇場」に初出演する。高校野球を通し、教育や社会、家族が抱える問題を描くヒューマンドラマ。台本を手にし「読んでいて、『次が次が』とワクワクするような物語。自分や周りのキャストの役がどう進んでいくのか、どう成長していくのか、のめり込む感覚がありました」と振り返る。
弱小野球部の幽霊部員・野原舜を演じる。同世代の男ばかりの現場に「めちゃくちゃ楽しいです」と声を弾ませつつ、猛暑の中での野球シーンの撮影は「キツい(笑い)」のひと言。今年の夏の甲子園では、5回終了時に選手が体を冷やす「クーリングタイム」が初導入されたが「5回でちゃんと休憩をはさむルールは本当に大事。僕らもこまめに水分補給しながらやってます」と話す。雰囲気は部活そのもので「みんなで『これ乗り切ろうぜ!』みたいな。団結力はあると思います。そういう雰囲気が作品に反映されてるのかな」と語った。
オーディションで球児キャスト12人のうちの1人に選ばれた。元甲子園球児や強豪校出身者ら野球経験者がひしめく中、未経験で選考を突破。「経験が全くないので、下手くそなんです」と苦笑する。とびきり野球のうまいキャラクターではないが、経験者との差を埋めるためにクランクイン前から練習を開始した。「(野球が)できるやつはできないまねができるけど、できないやつはできるまねができない」と言い、まじめな性格がにじむ。野球経験者の父や共演陣にアドバイスを求めながら、現在は「素人感が一番出る」という投球フォームの矯正中。体重も撮影前から6キロほど増やして臨み「周りから『変わった』って言われるくらいにはなった。手応えあります。結構みんな褒めてくれる。褒められて伸ばされてます」と笑った。
野球シーンの撮影では球児キャスト全員が一丸となり「ガチ。めっちゃガチです」と目を見開く。台本通りの試合展開を再現するため、とにかく数をこなし「人が投げた球を人が打って、それをエラーしたりちゃんと捕ったりしないといけない。その方向に飛ばすバッターも大変だし、ストライクゾーンに投げるピッチャーも大変」。その緊張感はすさまじく「みんな目がギラッギラ(笑い)。そういうのも演出で引き出しているのかなと思うと、すごいですね」。
演出は塚原あゆ子氏。新井順子プロデューサーとのタッグで、同局ドラマ「アンナチュラル」「MIU404」など多くのヒット作を手がけている。現場では球児キャストの意見が尊重され「僕ら個人個人に託されている感じがして、すごくうれしい」。また「みんな塚原さんが大好きっす。塚原さんがいるから頑張れる」と絶大な信頼を置く。現場には考えを持ち寄りながら作る雰囲気があり「塚原さんが『この野球シーンをこう作りたいんです。だから皆さんどう思いますか?』って。そこに野球経験豊富な子たちが意見をして、『なるほど、そういうことね』と。だから大好きです」と笑みを浮かべた。
今期は「下剋上球児」に加え、MBSドラマ「女子高生、僧になる。」(日曜深夜0時50分)にも出演。同時期に2本のレギュラードラマが放送されるのは、自身のキャリアでも初めてという。18年にテレビ朝日系特撮ドラマ「仮面ライダージオウ」で主演デビューし、丸5年。「誰にも負けない熱を持ってお芝居できていると思う」と自信を見せる。
自分の変化については「最初は好奇心で動いていたけど、今はより深く知りたい。もっとこうしたい、ああしたい、こんなことが出来たらいいなと、お芝居に対して追求していく感じが年々増えていっている気がします。でも、根本は変わってないと思います。すごく楽しくやってる」。うそのない言葉に充実感がにじんだ。
◆奥野壮(おくの・そう)2000年(平12)8月21日、大阪府生まれ。17年「第30回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でフォトジェニック賞と明色美顔ボーイ賞を受賞し、芸能界入り。主演ドラマはNHK「超速パラヒーロー ガンディーン」、ABCテレビ「恋に無駄口」など。趣味は漫画を読むこと、ゲーム。特技は11年続けたクラシックバレエ。170センチ、血液型A。
◆ドラマ「下剋上球児」 主人公南雲脩司(鈴木亮平)は高校に赴任して3年目の社会科教員。大学まで野球一筋だったが、ケガをきっかけに引退。スポーツトレーナーとして働くも教師になる夢を諦めきれず、32歳で教員になる。教師として過ごす中、地主の孫が入学したことをきっかけに廃部寸前の弱小野球部の顧問を務めることになり、日常が一変する。
■イケメン僧侶
○…MBSドラマ「女子高生、僧になる。」は、畑芽育(21)演じるアイドルオタクの主人公と、奥野演じるイケメン僧侶によるラブコメディー。笑いに振り切った作品で、撮影では大笑いしてNGを出すほど。「もう、コントだと思って見てもらっても大丈夫だと思います(笑い)」と話す。作品については「お寺のことを身近に感じられるし、お坊さんのことも知ってもらえるすてきなドラマです」と紹介した。