プロ野球の400勝投手、故金田正一さんの長男で俳優の金田賢一(62)主演舞台「せんにゅうかん~ラスト・フレンド~」(東京・新宿サンモールスタジオ)が8日、初日を迎えた。
認知症の父親の介護などをめぐる人間ドラマで、ホームヘルパー2級の資格も生かしたヘルパー役を熱演。初日上演後に取材に応じ、4度目の上演となる今回への思い、両親の死から感じたことなどを語った。
デビューから40年以上のキャリアを誇るベテランでも、初日は緊張と不安でいっぱいだったという。「やっぱり舞台はお客さんが入ってはじめてひとつのものになるからね。今日も心臓が飛び出るくらいでした。今はほっとしています」と和やかに語った。
親の介護をめぐる人々の心の揺れ動きや葛藤をはじめ、人間の死にざまやセカンドチャンスなど、舞台にはさまざまなメッセージが込められている。初演は2010年。金田は神奈川防犯連絡会の特別顧問も務めており、振り込め詐欺などを啓発する場面もある。
「内容は最初とあまり変わってないけど、だんだんシンプル(な演技)になっているかもしれない」といい「当時は49歳で伝えたいことを一生懸命にやろうとしていたから。老いてきたのもあるけど、シンプルにみせることの方が伝わりやすいし、(出演する)6人の奏でる音が響けば感動がそこに生まれるだろうという思いもあります」と語った。
19年から20年にかけて両親が相次いで他界した。初演の頃には感じていなかった思いはある。「母は認知症にもなっていて、去年の再演の時に思うところはありました」。長男ゆえに手続きなど、やることも多かったと振り返り「親の戸籍をとったり、長男はそういうのをやらないといけないから、悲しんでられなかった。それどころじゃないんだって」と冗談めかしつつ「悲しさもあるけど、もしかしたら紛れちゃうのかもしれないね。何かの時にポンと思うんだよ。今も毎日お線香あげたりしているけど、あんまり亡くなった感覚がないんだよ。どこかでいつも思っていればそれでいいのかなとも思っています」。
昨年の3度目の上演時には「これで最後にします」と語っていたが、1年後にすぐに再演。そこには友の死も関係していた。学生時代の同級生や、同じく同い年だった俳優渡辺徹が亡くなった。「やっておかないとだめなんだと。まだまだ先は長いと思うのは大きな間違い。自分がやろうって言ったら、(共演の)江藤潤さんも『やろう』って言うから、2人でやろうってなりましたね」。
ヘルパーの資格は20年ほど前に取得した。当時「そういうのが流行っていたんだよ。介護報酬が良くて、うちの女房もとっていて『持っていた方がいいよ』と。知り合いの施設で働かせてもらったりしましたね。日勤とか夜勤とか。ちゃんと時給も出たりして」と懐かしそうに振り返る。
今後の再演や意欲について聞かれると「あと2、3年はできるとは思いますけど、これ結構しんどいんだよ」と笑い「もう62歳やで。若い連中もいるのに、火吹いちゃうよ。この先、誰かがやりたいと言えば(代替わりは)それは素直にやっていただきたい。作品が生きていかないといけないと思っているので」。
舞台は18日まで上演する。千秋楽後の19日には同会場で共演する江藤らとイベントも開催。朗読や音楽、トークなどを織り交ぜたステージを企画した。「大人の楽しみをやろうぜっていうやつです。もう自分も先が長くないからさ」。本気か冗談か。どちらにもとれる柔らかい表情で、舞台を見つめていた。



