オープニング作品「てっぺんの向こうにあなたがいる」(阪本順治監督、31日公開)主演の吉永小百合(80)が、オープニングセレモニーで特別厚労省を授与された。
「すばらしい賞をいただきまして、本当にありがとうございます」と感謝した。黒澤明監督の1952年(昭27)の映画「生きる」以降、全ての黒澤映画に記録、編集、制作助手として参加してきた、野上照代さん(98)が、22年に同賞を授与されたことを引き合いに「3年前、大好きな先輩の野上照代さんが、この賞を受賞なさったと伺いました。とても、とても光栄に思っております」と笑みを浮かべた。そして「これからも、1歩1歩、映画の道を歩んでいけましたらと願っております。どうぞ、これからも皆さん、よろしくお導きください」と客席に集った国内外の映画関係者に呼びかけた。
特別功労賞は、永年の国内外を含めた映画界への貢献が目覚ましい映画人に贈るもの。東京国際映画祭祭は、常に挑戦者として、そして女優としての品格をもって、日本の映画文化の向上に多大な貢献を果たした功績に対し、心からの敬意を表し、授与するとした。
吉永は、1959年(昭34)の「朝を呼ぶ口笛」で本格的な映画デビューを果たして以来、常に第一線で活躍し、「てっぺんの向こうにあなたがいる」が124本目の映画となる。日本アカデミー賞では史上最多となる最優秀主演女優賞を4度受賞(84年『おはん』、『天国の駅HEAVEN STATION』、88年『つる-鶴-』、『華の乱』、00年『長崎ぶらぶら節』、05年『北の零年』)。また、文化功労者としての選出をはじめ、紫綬褒章を受章するなど、その功績は国家レベルで高く評価されている。自ら企画を手掛けた14年「ふしぎな岬の物語」ではモントリオール世界映画祭で審査員特別賞グランプリ&エキュメニカル審査員賞を受賞。以降も15年「母と暮せば」、23年「こんにちは、母さん」などで戦争の記憶や命の尊厳をテーマにした作品にも精力的に取り組んできた。
この日は、スクリーンに、ブルーリボン賞主演女優賞を最年少の17歳で受賞した62年「キューポラのある街」(浦山桐郎監督)、高倉健さんと初共演した82年「動乱」(森谷司郎監督)、83年「細雪」(市川崑監督)、初めてプロデューサーを務めた14年「ふしぎな岬の物語」(成島出監督)、そして23年の前作「こんにちは、母さん」(山田洋次監督)と、代表作が次々と映し出された。安藤裕康チェアマンは「新人の頃の『キューポラのあるに街』に始まり、すばらしい演技で日本、外国の観客の皆さんを魅了し、勇気と感動を与えてきたと思います。昭和、平成、令和と3世代にわたって日本映画のど真ん中にいた。日本の女優さんが特別功労賞を受賞するのは初めて」とたたえた。
「てっぺんの向こうにあなたがいる」は、女性として初めて世界最高峰のエベレスト登頂に成功した登山家・田部井淳子さんの15年の著書「人生、山あり“時々”谷あり」(潮出版社)が原案。吉永は田部井さんを元にした多部純子を演じた。阪本監督とは、12年「北のカナリアたち」以来13年ぶりに再タッグを組んだ。
吉永は田部井さんと、12年にTBSラジオ「こんばんは 吉永小百合です」(日曜午後10時半)で対談。田部井さんは16年10月に腹膜がんのため77歳で亡くなったが、その3カ月前に高校生と富士山に登ったのが人生最後の登山となった。そうした事実を踏まえ、24年8月にクランクインした撮影中、79歳だった吉永が田部井さんにならい、耳にピアスの穴を開けたことも話題となった。純子の青年期を、のん(32)が、佐藤浩市(64)が、田部井さんの夫政伸さんをモデルにした夫の正明、正明の青年期を工藤阿須加(34)が演じる。元読売新聞記者の北村節子さんがモデルとなった、純子の山仲間で親友の編集者北山悦子を天海祐希(58)が演じる。



