フランスで開催中の世界3大映画祭の一つ、第79回カンヌ映画祭授賞式が23日(日本時間24日)開かれた。最高賞パルムドールを競うコンペティション部門に出品された、濱口竜介監督(47)の新作「急に具合が悪くなる」(6月19日公開)で主演のベルギーの俳優ビルジニー・エフィラ(49)とダブル主演した女優・モデル・映画監督のTAOこと岡本多緒(41)が、女優賞を受賞した。日本人俳優の女優賞受賞は、同映画祭79年の歴史で初めて。
岡本は、1985年(昭60)5月22日に千葉県で生まれ、14歳で日本でモデルとしてデビューした。2006年(平18)に渡仏してパリ・コレクションに参加。その後、TAO名義でミラノ、ロンドン、ニューヨークと数々のトップメゾンのショー、雑誌、ワールドキャンペーン広告に多数出演し、トップモデルとして活躍した。
13年には、真田広之(65)も出演した米英合作映画「ウルヴァリン:SAMURAI」(ジェームズ・マンゴールド監督)で、映画デビューを果たした。翌14年には、谷原章介(53)が主演のWOWOW連続ドラマW「血の轍」でヒロインを演じ、日本のドラマに初出演。15年には、元EXILEの黒木啓司さん(46)主演の映画「クロスロード」(すずきじゅんいち監督)で、日本の映画にも初出演した。その後は、16年「バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生」(ザック・スナイダー監督)を含め、米ハリウッド作品を中心に国内外で複数のドラマに出演。17年には香港、中国合作映画「マンハント」(ジョン・ウー監督)で福山雅治(57)と共演した。
23年からは拠点を日本に移して、岡本多緒名義で活動をスタートし、大沢たかお(58)主演の映画「沈黙の艦隊」(吉野耕平監督)に出演した。同年6月にTBS系で放送されたドラマ「ラストマン-全盲の捜査官-」第7話では、福山と再共演。さらに、同年には自身で初めて企画・監督・脚本・出演を手がけた短編映画「サン・アンド・ムーン」が、第36回東京国際映画祭のAmazon Prime Videoテイクワン賞のファイナリスト作品に選出されるなど監督としても第1歩を踏み出した。
プライベートでは、14年に米国のブランド「バナナ・リパブリック」の広告で共演した、世界的な編集者、クリエーターのテンジン・ワイルド氏と16年5月にに結婚。同氏は、米国のファッション・アート誌「The Last Magazine」(ザ・ラスト・マガジン)を08年に創刊し共同創設者・編集長を務めたほか、ジバンシィやヒューゴ ボスをはじめ、世界的なブランドのブランディングも手がけた。
岡本は、チベット人の母とスイス人の父の間に生まれたスイス出身で自身のルーツの一つ、チベット文化を伝えることにも取り組むワイルド氏と、20年にアウターウェア・ライフスタイルブランド「ABODE OF SNOW」(アボード・オブ・スノー)を設立。共同クリエイティブディレクター兼サステイナビリティ・アンバサダーを務めるなど実業家としての一面も持つ。
今回のカンヌ映画祭には、ワイルド氏との間の第1子を妊娠した身重の体で参加していた。15日の公式上映の際はレッドカーペットを歩き「やっぱり…命を授かるということは私にとって夢でもあったので、カンヌ映画祭の晴れ舞台で一緒に歩けるのは、すごいうれしいし、生まれてきたら自慢しなきゃなと思っています」と瞳を輝かせていた。
◆「急に具合が悪くなる」 フランス、パリ郊外の介護施設「自由の庭」の施設長マリー=ルー・フォンテーヌ(ビルジニー・エフィラ)は、入居者を人間らしくケアすることを理想としつつ、人手不足やスタッフの無理解などに悩まされている。そんな中、日本人の演出家・森崎真理(岡本多緒)に出会い、がん闘病中の真理の描く演劇に勇気をもらう。同じ名前の響きを持つ偶然に導かれて、交流を始めた2人だったが、ある時、真理が「急に具合が悪くなる」。真理の病の進行とともに、2人の関係は劇的に深まり、互いの魂を通わせ合うようになる。がんの転移を経験しながら生き抜く哲学者の宮野真生子氏と、臨床現場の調査を積み重ねた人類学者の磯野真穂氏が交わした20通の往復書簡を元にした、19年の同名共著(晶文社)を原作に、濱口監督が脚本を執筆。



