大手カー用品チェーンのオートバックスセブンは、同社オリジナルのキャンピングカー・レーベルであるゴードンミラーモータースの新型モデル「GMLVAN S-01(ジーエムエルバン エスゼロワン/以下、S-01)」を2022年11月22日に発表した。


オートバックスセブンが展開するゴードンミラーから新発売となった軽自動車のキャンピングカー「GMLVAN S-01」(筆者撮影)
オートバックスセブンが展開するゴードンミラーから新発売となった軽自動車のキャンピングカー「GMLVAN S-01」(筆者撮影)

ダイハツ工業(以下、ダイハツ)の軽商用バン「ハイゼットカーゴ」をベースに、車中泊仕様の軽キャンピングカーとして開発されたのが同モデル。2019年に発売したトヨタの商用バン「ハイエース」をベースとする「GMLVAN V-01(以下、V-01)」、日産のライトバン「NV200バネット」をベースにした「GMLVAN C-01(以下、C-01)」に続く、同社オリジナルモデルの第3弾だ。

キャンプや車中泊などの人気が高まる近年、2022年度上期の販売台数が2021年度から大幅に伸長したという同社製キャンピングカー。そんな中で発表された新型S-01は、どんな特徴を持ち、どのようなユーザー層をターゲットとするのだろうか。また、新型モデルを軽キャンピングカーとした背景や狙いは、どこにあるのだろうか。

発表当日、同社オリジナルブランドであるゴードンミラーの直営店「ゴードンミラー・クラマエ」(東京都墨田区)で開催された発表展示会を取材したので、ご紹介しよう。


ゴードンミラーとは

ゴードンミラーの直営店となる「ゴードンミラー・クラマエ」(筆者撮影)
ゴードンミラーの直営店となる「ゴードンミラー・クラマエ」(筆者撮影)

オートバックスセブンが運営するゴードンミラーモータースは、「ガレージライフスタイル」をコンセプトとする同社プライベートブランド、ゴードンミラーの車両レーベルだ。2017年にスタートしたゴードンミラーは、ガレージやアウトドアで余暇などを楽しむためのカー⽤品やアパレル、インテリア家具など、幅広いジャンルの商品を展開する。いずれも従来オートバックスで扱う用品群とはイメージが異なる、ヘビーデューティで、機能的なライフスタイル提案型アイテムを数多くそろえる。


ゴードンミラーモータースが手がけるキャンピングカー(写真:オートバックスセブン)
ゴードンミラーモータースが手がけるキャンピングカー(写真:オートバックスセブン)

なかでもゴードンミラーモータースが手がけるキャンピングカーは、近年注目を集める「バンライフ」というライフスタイルをコンセプトに掲げていることが特徴だ。バンライフとは、今までの家を基盤にした生活ではなく、暮らしの拠点から仕事、旅行やアウトドアなどのレジャーまで、すべてをキャンピングカーなどのクルマ(バン)を使って行うというもの。日本でも若い世代を中心に注目を集めている。

そうした最新のライフスタイルを背景に持つ同社製キャンピングカーは、時代のニーズにマッチさせたレトロな内外装や色使いを採用。また、装備を必要最小限にしながらも、快適性なども併せ持つことで、キャンプなどでの車中泊だけでなく、アウトドアスポーツやクルマ旅など、幅広い用途に対応することも特徴だ。


S-01の特徴・外装

ゴードンミラーモータースの第3弾モデルとなるS-01のスタイリング(写真:オートバックスセブン)
ゴードンミラーモータースの第3弾モデルとなるS-01のスタイリング(写真:オートバックスセブン)

新型となるS-01は、前述のとおり、ハイエースをベースする大型モデルV-01、NV200バネットをベースとする中型モデルC-01に続く、小型の軽キャンピングカーだ。

ベース車両は、17年ぶりのフルモデルチェンジを受け、2021年12月に発売されたダイハツのハイゼットカーゴ。車体構造のスクエア化を施すことで、クラス最大の荷室長や荷室幅(4名乗車時)、荷室高を実現し、商用ユースはもちろん、軽キャンピングカーのベースモデルとしても大きな注目を集めているモデルだ。

なかでもS-01では、最上級グレードの「クルーズターボ」をベースとする。最高出力64psを発揮するパワフルなターボエンジンが、荷物を満載しても余裕の走りを実現。高速道路などを使った長距離移動も非常に楽だ。また、最新の「スマートアシスト」を採用することで、衝突回避支援ブレーキ機能、車線逸脱抑制制御機能など、数々の先進装備も搭載し、高い安全性も実現する。


S-01のフロントフェイス(筆者撮影)
S-01のフロントフェイス(筆者撮影)

S-01では、それをベースに、フロントフェースに丸目ヘッドライトを特徴としたクラシカルでスマートなデザインを採用。ボンネット、グリル、バンパー、フェンダー、ライトまわりをオリジナルに刷新することで、ベース車両のクラスを感じさせないスタイルを演出している。なお、このフェースデザインは、ハイエース・ベースのV-01が、やはり丸目ヘッドライトなど、オリジナルのフロントまわりを採用することと同様だ。V-01でも人気が高いカスタマイズ手法を採り入れることで、個性的な外観スタイルを実現する。

ボディーカラーには、オリジナルのオリーブドラブとコヨーテ(ダイハツ サンドベージュメタリック)を採用することも、S-01の大きな特徴だ。シックで、アウトドアにもマッチするこれらのカラー、じつはダイハツが生産工場で施すメーカー塗装で、高い質感も実現する。


S-01について語るオートバックスセブンの小曽根氏(筆者撮影)
S-01について語るオートバックスセブンの小曽根氏(筆者撮影)

ブランドを手がけるオートバックスセブン 執行役員ライフスタイル担当の小曽根憲氏によれば、S-01は「ダイハツさんとの共同開発により生まれた」という、いわば、コラボレーションモデルだ。


トヨタのハイエースをベースにしたV-01(筆者撮影)
トヨタのハイエースをベースにしたV-01(筆者撮影)

コラボの経緯は、約3年前、2019年1月開催のカスタマイズカー展示会「東京オートサロン2019」までさかのぼる。その展示会で、オートバックスセブンが手がけるキャンピングカーとして、V-01やC-01が初お披露目されたのだが、それらを見たダイハツの首脳陣が気に入り、当時発売前だった現行ハイゼットカーゴとのコラボを依頼。


日産のNV200バネットをベースにしたC-01(筆者撮影)
日産のNV200バネットをベースにしたC-01(筆者撮影)

オートバックスセブン側もそれを受け入れ、当時未定だったS-01のベース車両をハイゼットカーゴとすることを決定したという。メーカーがカスタマイズカーの外装塗装を担当するという稀少な事例となった。ちなみにNV200バネット・ベースのC-01にも、オリーブドラブとコヨーテというボディーカラーを採用するが、こちらは日産が生産工場で塗装を担当。ゴードンミラーモータースにとって、直接メーカーへ塗装を委託するのは、S-01で2例目となる。


S-01の特徴・内装

S-01の内装(写真:オートバックスセブン)
S-01の内装(写真:オートバックスセブン)

一方、内装では、前席と2列目シートに、ボディーカラーとマッチさせたオリジナルカラーのシートカバーを装備する。カバーの素材には、軽量かつ高い強度を誇り、摩擦・引裂き・引張・すりきれ・穴あきに強いコーデュラ・ファブリックを採用。また、表面にはデュポン社のテフロン加工も施すことで、はっ水・防汚・防じんの効果をプラスしている。


S01のシート背面(筆者撮影)
S01のシート背面(筆者撮影)

さらに前席のシートカバー背面には、大型のポケットとモールウェビングも装備する。ハイゼットカーゴの2列目シートは、フロアに収納することで荷室をフラットにできることも特徴だ。ただし、その際には、ヘッドレストを取りはずす必要があるのだが、シートカバー背面に大型のポケットを設けることで、ヘッドレストを収納することが可能だ。

また、モールウェビングは、モールシステムに対応したポーチなどのアイテムを簡単に取り付けしたり、カラビナなどを使用すれば好きなキャンプギアをつるしたりすることもできる。このように、簡単に自分好みのアイテムを追加できるのも、S-01の魅力のひとつだといえる。


フルフラットにした状態(筆者撮影)
フルフラットにした状態(筆者撮影)

荷室は、スペースを最大限に有効活用し、ユーザーが好みのアレンジができるよう、必要最小限のシンプルな設計としている。なお、2列目シートの背もたれを倒し、フルフラットにした際のサイズは、奥行き178cm×幅131cmだが、前席を前にスライドし背もたれを倒せば、奥行きを最大で193cmにまですることが可能。長身の大人でも2人が橫になれる空間を作ることができる。


無垢の天然目アカシア材を使った天井部(筆者撮影)
無垢の天然目アカシア材を使った天井部(筆者撮影)

室内の天井や荷室部サイドパネルには、無垢(むく)の天然木アカシア材を採用する。硬く粘りある材質は、衝撃力や曲げに強く、耐久性にも優れる。また、天然木のもつ温もりや経年変化の風合いを楽しめることも魅力だ。加えて、荷室後方の左右には、同じく天然木の収納式テーブルも装備。テーブルのサイズは、奥行き35cm×幅54cmで、フロアからの高さは40cm、耐荷重10kg。一般的なポータブル電源を載せたり、室内での食事、ノートPCなどを置いてリモートワークのデスクに使ったり、多様な用途に使うことが可能だ。

内装では、ほかにも荷室部フロアに防水・防汚加工シートを採用。アウトドアで濡れたり、汚れたウエアやグッズなどを置いたりしても、楽に掃除ができる工夫も施されている。また、天井に4個装備されたLEDダウンライトは、調光機能付きのため、雰囲気や好み、就寝時などで、明るさを変更することができる。さらに遮光カーテンを標準装備することで、車中泊でのプライバシーも確保。天井・荷室部サイドに標準装備された断熱施工との組み合わせにより、夏場の日差しや冬場の冷気を遮断することもできる。


S-01のリアビュー(筆者撮影)
S-01のリアビュー(筆者撮影)

なお、S-01の価格(税込み)は、2WD車319万円、4WD車338万8000円だ。‪2022年12月17日より、今回発表会があった直営店‬ゴードンミラー・クラマエで‪車両展示および先行予約受け付けを開始‬。また、‪全国オートバックスグループ店舗‬のうち、ゴードンミラー‪正規取扱認定店‬「ゴードンミラー・‪オーソライズドディーラー‬」の中で、車両販売も行う15店舗(2022年12月からは16店舗)で、‪2023年2月中旬より順次販売を開始‬する。


新型S-01が狙うターゲット層

S-01の楽しみ方や使い方の提案(写真:オートバックスセブン)
S-01の楽しみ方や使い方の提案(写真:オートバックスセブン)

ゴードンミラーモータースのキャンピングカーを購入する層は、ブランド担当の小曽根氏によれば、「キャンプフリークよりも、これからアウトドアやクルマ旅などをはじめたい初心者が多い」という。また、車体サイズがノーマルとほぼ変わらないため、一般的な駐車場にとめられるメリットもあるなどで、都市部在住のユーザーが多いことも特徴だ。とくに従来販売するハイエース・ベースのV-01は、乗車定員が3/6人であることもあり、「ファミリー層に人気が高い」という。また、NV200バネット・ベースで、乗車定員2/5人のC-01では、「カップルで使うユーザーも多い」といった傾向があるそうだ。


大人でも十分に横になれる広さを確保(筆者撮影)
大人でも十分に横になれる広さを確保(筆者撮影)

対して、軽キャンピングカーのS-01(乗車定員2/4人)で想定する主なユーザーは、近年、若い世代からシニアまで幅広く人気がある1人キャンプを楽しむ層、いわゆる「ソロキャンプ」派だ。なかでも小曽根氏は「最近、女性のソロキャンプ・ユーザーが増えていることにも注目している」という。理由は、従来、オートバックスグループの店舗に来店する層には、女性ユーザーが比較的少ないことだ。前述のとおり、同社キャンピングカーの販売は、‪全国のオートバックスグループ店舗‬のうち、ゴードンミラー‪正規取扱認定店‬で、さらに車両販売ができる店舗で行っている。つまり、ショップ自体は、通常の‪オートバックス‬店舗だ。従来のイメージでは、やはり女性ユーザーが少ないことがうかがえる。


今後の展開について

小曽根氏は、今後、ゴードンミラーやキャンピングカーの取り扱い店舗を増やす計画もあることで、「S-01に興味を持つ女性ユーザーが店舗に来てくれる波及効果で、(‪オートバックス‬店舗の多くで)新しいユーザーが開拓できることにも期待している」という。実際に、従来モデルのV-01やC-01でも、今までの同社顧客、いわゆる「クルマ好き」とは違う層が多く、それらを扱う店舗でも「新規顧客が増えた」実績があるという。S-01の市場投入が、どのような効果を生み、新たな女性ユーザーの獲得につながるのかも注目される。

なお、S-01の目標販売台数などは非開示だが、同社では、ゴードンミラーを主軸とするライフスタイル事業で、「売り上げベースで100億円規模の事業にする」という目標を掲げているという。近年、需要が伸びているキャンピングカーをはじめ、新たなライフスタイルを提案する同社の新規事業が、どれほどの成長をみせるのかも気になるところだ。

【平塚 直樹 : ライター&エディター】