尿の臭いでがんをかぎ分ける「がん探知犬」を使った健康診断を全国で初めて実施する山形県金山町が2日、町民説明会を開いた。同町は胃がんによる死亡率が高く、「中でも女性の胃がんの死亡率は全国で1番」(鈴木洋町長)。改善の方法を千葉県の日本医科大千葉北総病院副院長でがん診療センター長の宮下正夫教授に相談したところ、がん探知犬を提案された。

 「世界でも初めて」(宮下教授)という試みで、不安げな面持ちで集まった約120人の町民に対し、宮下教授は「早期がんを含め334例中333例で反応した。良性腫瘍には反応しない」と、99・7%という探知犬の高い実績を説明した。

 犬は人間の100万~1億倍の嗅覚を持ち、がん特有の臭いに反応する。千葉県館山市の施設で探知犬の育成も進み、初期のがんでもかぎ分ける探知犬は現在5匹(すべてラブラドルレトリバー)いるという。

 健康診断で採取した尿は冷凍して同病院に送られ、探知犬が検査する。結果は3カ月後に通知される。探知犬は「がんがあることは分かるが、どこにがんがあるかは分からない」(宮下教授)ため、がんと判断された人は内視鏡やCTスキャンなどで何がんか検査しなければいけない。

 探知犬を使った検査は同病院の患者に対して行われているが、研究段階のため、受診には同意書が必要。町では1100万円の予算を立て、初年度は40歳以上の1000人を対象に実施する。「早期の治るがんを見つける」ことを目的とした「人間ドック」ならぬ「人間ドッグ」は、12日にスタートする。【中嶋文明】

 ◆金山町(かねやままち) 山形県北東部に位置し、北は秋田県に接する。面積の78・8%が森林で金山杉は特産。人口は1950年(昭25)の1万299人をピークに減少し、現在は5797人。1925年(大14)の町制施行以降、1度も他市町村と合併することがなかった独自色の強い町としても知られる。「球界の高見盛」と呼ばれた元ヤクルト佐藤賢投手は町出身。