「アベノタメノ解散」だ! 安倍晋三首相は、28日の臨時国会を召集直後に衆院を解散し、10月22日か29日に衆院選を行う意向を固めたことが17日、分かった。野党や「小池新党」の選挙体制が整わないタイミングを狙い、臨時国会で森友&加計学園問題の追及を避けるためには「今だ」と判断したようだ。ただ、北朝鮮情勢が緊迫する中の解散で、首相周辺でも慎重論がある。すべては首相の都合。識者は「本当に大義のない解散。大勝できるか分からない」と指摘した。

 首相が解散権という「伝家の宝刀」を抜く前に、永田町は選挙に走り始めた。首相は17日までに、与党公明党の山口那津男代表に、早期解散の方針を伝えた。公明党はこの日、地方幹部を集めた会合を開き、選挙準備に着手。国会での統一会派結成に関して党首が会談する予定だった民進、自由、社民3党は会談を中止。情勢分析に切り替えた。

 自民党関係者によると、首相は9月中の解散を検討。28日召集の臨時国会冒頭か、数日内の日程が念頭にあるという。衆院トリプル補選と同じ(1)10・10告示-22日投開票か、(2)10・17日公示-29日投開票が想定される。自民党内では「一気呵成(かせい)にやるべき」との声もあり、(1)の日程が軸になりつつある。衆院解散になれば、3補選は衆院選に統合される。

 森友&加計問題の不適切な対応などで内閣支持率が急落。首相は先月、内閣改造で政権浮揚を目指した。支持率は若干持ち直したが「安倍1強」の空気は消え、「解散総選挙は来年」の見立てが、主流だった。

 しかし、複数の関係者によると首相は水面下で早期解散の可能性を模索。今月10日、「追い込まれ解散」で政権を失った経験がある麻生太郎財務相に、早期解散を含めた選択肢を進言された。翌11日には、山口氏や自民党の二階俊博幹事長とも会談。関係者は、「10日の安倍&麻生会談が、1つの潮目。その後、自民党議員の動きがあわただしくなった」と、振り返る。

 民進党が「離党ドミノ」で混乱し、小池百合子都知事と連携した若狭勝衆院議員による「小池新党」の実態も見えない中、敵に時間的余裕を与えないうちの解散が有利と判断したようだ。臨時国会を開けば、再び森友&加計問題に焦点が当たる。その前に選挙を行い、勝利すれば「国民の信を得た」と主張できる。11月上旬は、トランプ米大統領の初来日予定も控える。すべてが首相の都合だ。

 民進党の前原誠司代表は18日、「自己保身解散だ」と切り捨てた。首相周辺の一部にも、北朝鮮情勢を理由に早期解散に慎重な声があるという。世論調査でも、早期解散への支持は少ない。「今」の理由を、首相は国民にどう説明するのだろうか。【中山知子】