第48回衆院選は23日、全465議席が確定した。自民党は、公明党とともに定数の3分の2となる310議席を確保する圧勝だが、実態は、野党分裂による“棚ぼた勝利”だ。安倍晋三首相は一夜明け会見で、「謙虚」「真摯(しんし)」と控えめな言葉を連発した。国民の厳しい視線を意識し、低姿勢路線でスタートした。

 安倍首相は、自民党本部で会見し、「わが党が3回連続で(単独)過半数を得たのは半世紀ぶり。同じ総裁のもと、3回続けて過半数を得たのは、結党以来60年の歴史で初めてだ」と述べた。12年、14年、今回と自身のもとで圧勝したことを歴史的だといわんばかりに胸を張った。しかし今回の勝利は、野党分裂により批判票受け皿が分散したことが最大の要因。首相が周囲に「こんなに勝つとは思わなかった」と話すほどの、“棚ぼた”だった。

 だからこそ、高揚感はなかった。首相は「謙虚に政策を進めなければならない。より一層厳しい国民のまなざしが注がれることを、すべての与党議員が意識しないといけない」「今まで以上に、謙虚で真摯な政権運営につとめ、大きな勝利をいただいたが謙虚に進めたい」。控えめな言葉を多用して、低姿勢路線を強調した。

 実際、党内では小泉進次郎筆頭副幹事長が「国民はだんだん(自民党に)飽きてきている。野党が1つにまとまっていたら、政権交代の可能性があった」と指摘するなど、国民の期待を踏まえた勝利ではないとの認識が浸透。首相も「5年前の(野党から与党になった)初心を忘れず、国民の負託に応えるためにまい進したい」と、言葉はどこまでも慎重だった。【中山知子】