神奈川県座間市のアパートで9人の遺体が発見された事件。世間に衝撃を与えた先月30日の発覚から、間もなく1カ月になる。無職白石隆浩容疑者(27)は、ツイッターで「死にたい」などと投稿した若い女性を誘い出し、殺害したとみられている。自殺願望を持つ少女を支援するNPO法人「BONDプロジェクト」の橘ジュン代表(46)は「つらいときこそ、いったん立ち止まって」とメッセージを送った。

 橘氏はこれまで、10~20代の少女を中心に3000人以上の相談を受けてきた。事件について「今回被害に遭った女の子たちは、居場所を求めていたのだと思う。容疑者ではなく、私たちを見つけてくれていたら」と肩を落とした。

 報道を受け、すぐに恐怖を感じた。「あの子だったらどうしようという子がいた。不安で、すぐには連絡もできなかった」。自殺願望が強く、SNSで知り合った男とのトラブルを繰り返していた少女だった。「その後『大丈夫です。私生きてます』と連絡がきた。本当に良かった」。

 この少女のように、何らかの被害があってから相談に訪れるケースも少なくないという。だからこそ「この事件で亡くなった女の子たち(被害者9人中8人が女性)が、特別だったわけではない」と断言した。

 BONDプロジェクトの相談員は橘氏を含め9人。メールや電話、面談などで月約1000件の相談を受ける。いじめや暴力、性被害などの悩みを抱える少女もいれば、家庭や金銭面に問題はなく、友達や彼氏もいるが「死にたい」と訴える少女もいる。「1人1人が違う。悩みの原因に、ピッタリ当てはまる言葉はない」。相談員たちも日々、葛藤を抱きながら少女たちと向き合っている。

 白石容疑者は被害者について「本当に死にたいと考えている人はいなかった」と供述。橘氏は「そこは本人たちにしか分からないところ」とした上で、SNS上で「死にたい、自殺したい」などと投稿する少女は間違いなくSOSを発していると分析した。「なぜ知らない男のところに行くのか、と思われるが、彼女たちは孤独を抱えている。優しくされたり必要とされたら、行ってしまう」。

 親や友人、周りの人間はどう対応すべきか。「みんな、身近な人間には迷惑をかけたくない。『子どもは親には言えない』『仲が良いからこそ友達に心配をかけたくない』と考えていることを理解してほしい」。様子の変化を見つけたら、勇気を持って声をかけることが大切だという。「私は必ず、相談に来てくれた子には『またね』と言うようにしている。その何げない一言を、彼女たちはしっかり覚えてくれているんです」。【太田皐介】

 ◆橘(たちばな)ジュン 1971年(昭46)1月、千葉県生まれ。09年にNPO法人「BONDプロジェクト」を設立し、代表を務める。「動く相談窓口」として全国各地を飛び回り、虐待や家出、貧困などさまざまな困難を抱える少女を支援。イベントや講演会も開催している。パトロール活動や、街頭アンケートも並行。ルポライターとして、少女たちの声を伝えるフリーペーパー「VOICES MAGAZINE」を発行している。著書に「漂流少女~夜の街に居場所を求めて~」(太郎次郎社エディタス)など。