埼玉県越谷市と、隣接する吉川市の半径約1・5キロの範囲で2日未明、住宅や物置が燃える火災が4件相次ぎ、1人の遺体が見つかったほか、男性1人が重傷を負った。うち3件は10分以内に発生しており、県警は連続放火の可能性があるとみて調べている。越谷、吉川両市では4月以降、他に少なくとも8件の不審火が相次いでおり、住民から不安の声が上がっている。

 埼玉県警によると、2日午前4時15分ごろ、吉川市川藤で建物が燃えていると119番があり、木造2階建ての住宅が全焼。焼け跡から性別不明の遺体が見つかった。この家に住む女性の浅見なかさん(85)と連絡が取れておらず、県警が身元の確認を進めている。

 その3時間前、午前1時5~15分ごろには火災の通報が3件あり、越谷市中島の住宅が全焼、同市東町で物置の一部が焼けた。吉川市吉川の木造2階建て住宅も全焼し、避難しようと2階から飛び降りた男性(52)が足の骨を折る重傷を負った。4件の火災は、半径約1・5キロの範囲で短時間に発生していることから、県警は放火の可能性があるとみて調べている。

 遺体が発見された火災現場の近くに住む男性(66)は、バチバチという大きな音で目が覚めたという。「ベランダから外を見て驚いた。住宅までは50メートルくらい距離があるが、すぐ近くで燃えているように感じた。炎は20メートルくらいの高さまで上がっていた」と話した。

 周辺住民らによると、この地域では2、3月には空き巣被害、4月には不審火が相次いでいた。高齢者も多く、自宅に鍵をかけない習慣のある人もいたが、「気をつけないといけない」と話し合っていたという。

 男性が重傷を負った3件目の住宅近くに住む会社員男性(61)によると、午前1時すぎに爆発音が聞こえ、外に出ると家が軒から燃えていたという。「火事ばかりで、一緒に住む孫もおびえている。放火だと思うとぞっとする。夜も落ち着いて眠れない」と語った。付近には防犯カメラが少ないといい、設置も検討しているという。

 越谷、吉川市では先月から不審火が相次いでおり、吉川消防署南分署によると、夜間パトロールを行うなど警戒中だった。同署の担当者は「近隣市町村などと、不審火に関しては情報共有している。放火の疑いを含め、注意を呼び掛けている」と話した。