新潟市西区に住む市立小針小2年の大桃珠生さん(7)が殺害され、遺体がJR越後線に遺棄された事件から今日14日で1週間。犯人逮捕に至らず、地域の不安は募るばかりだ。事件現場から近い新潟青陵大学の教授で、犯罪心理学に詳しい碓井真史氏(58)に、事件をどうみているかを聞いた。また、地域住民が心掛けるべきことについても、語ってもらった。【聞き手・清水優】

 新潟青陵大学は新潟市中央区にあり、事件現場まで約5キロ。碓井氏は実際に足を運び、分析を重ねた。

 碓井氏 10日の下校時間帯に現場を歩きました。線路沿いの道は人通りが少ないが、他の子も車も通る。電車も10分ごとに通る。犯人からすれば、もめれば危険な場所。怖がらせず、言葉巧みに、「スムーズに」連れて行く必要があったと考えられます。子どもを狙う犯人は子どもの扱いがうまい。見るからに不審人物ではなく、好青年に見えることすらあり、大人でもだまされる。どんなに用心深い子も、狙われれば危険です。

 大桃さんは午後3時過ぎの下校途中に連れ去られた。そして午後10時半、自宅近くの線路上に遺棄され、列車にはねられた。

 碓井氏 殺人事件の犯人は犯行後、遺体を残して立ち去ることが多いが、今回の犯人は立ち去らず、その後、遺体を遺棄する必要があった。現場から少し北西に行けば、砂丘に広い松林が広がり、その先は砂浜を経て、日本海です。人目につかない場所が他にあるのに、捜索が続く自宅近くにあえて戻した。何か意図がある。線路の柵は簡単にくぐれますが、さらに5メートルほど先の線路上まで遺体を運び、犯行をやり遂げている。簡単にパニックになるような人物ではない。一定の力があり、素早く行動できる人物像が浮かぶ。

 なぜ、犯人は遺体を線路に置いたのか。

 碓井氏 自殺の偽装や、絞殺の証拠隠滅という見方をする人もいるが、結果的には隠滅できていない。それより、異常な動機が考えられる。過去の事件で遺体を傷つけた犯人の動機には、遊びや作品作り、復活の儀式などのケースもある。遺体を傷つけるところを、観察したかった可能性もある。非常にゆがんでいるが、遺体を早く返してあげたいと考え、すぐに見つかる方法が線路への遺棄だったのかもしれない。遺族や町に衝撃を与えるのが目的だった可能性もある。

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 現場近くの地域住民には事件の衝撃が走り、スクールカウンセラーに相談する児童も相次いでいる。

 碓井氏 ご遺族と、今学校にいる子どもたちの支援が必要です。みな、大桃さんの死を悲しみ、衝撃を受けている。笑顔でいる子も、心の中は深く傷ついている。1日も早い犯人逮捕が必要です。そして、子どもたちの日常を、1日も早く取り戻すことです。誰も大桃さんの死を忘れないが、子どもたちには普通の生活を取り戻してあげなければいけない。事件の衝撃にすくみ、元気を失ったら、悪い犯人は喜んでしまう。笑顔を取り戻すことは、悪い犯人に負けないことだ。

 不審者情報も多い。

 碓井氏 子どもを守るため、人を見たら殺人犯と思えというくらい、過敏になる気持ちも分かります。ただ、過剰反応は相互不信、疑心暗鬼を生み、逆に隙を作ってしまう。子どもを守るためには、落ち着いて、正しい犯罪不安を持ち、みんなで子どもを守っていくことが大切です。