サッカーワールドカップ(W杯)ロシア大会で「おっさんジャパン」などとやゆされていたMF本田圭佑(32)、FW岡崎慎司(32)のセネガル戦での活躍に、DF長友佑都(31)は「『おっさん』たちで作ったゴールだ」とコメントした。30歳のMF乾貴士も含めた「おっさん」たちの活躍に「おっさん力(ぢから)」の著書のある同志社女子大学芸学部メディア創造学科の影山貴彦教授は、「『おっさん』たちの活躍は世の中のおっさんたちに力を与えた」と喜んだ。

 「おやじ」でも「おじさん」でもなく、関西弁で言う愛嬌(あいきょう)を含んだ「おっさん」の力。今回活躍した本田たちは、いずれも関西など西日本出身者。まさに、若手にうとまれず、無理はせず、わが道を行く、愛すべき「おっさん力」を発揮した形だ。

 影山氏によると、社会における「おっさん」には一定の経験を積んだ落ち着きがあり、一世代前の団塊の世代に求められていたような悲壮感はなく、良い意味で楽観的な強さがあるという。「おっさんは『巨人の星』的な血へど吐くまでの努力も、バブルのイケイケも崩壊も知っているから、努力はするが、悲壮感にはつぶされずに前を向ける余裕がある」のだという。

 おっさんは、一世代前の先輩に「背中を見て盗め」と言われて苦労した経験もあり、若手に対し「君らの言うこと100%分からんかもしれへんけど、聞く耳はもってるで」という立場で、コミュニケーションも良好だ。一般社会でのおっさんの定義はおよそ40~50代だが、サッカー界では30代はベテラン、「おっさん」世代と言える。

 98年フランス大会で初出場した日本代表。サポーターの期待の中で、当初は「絶対に負けられない」という緊張感の頂点で「ガチガチ」だった。20年後のロシア大会の“次世代”の日本代表の本田たちについて、影山氏は、いい意味で社会の中の「おっさん」と似た強さを持っているとみる。「『いいこともあれば、つらいこともあんねんで。知らんけどな』と笑いとばせる強さがあるから、前評判でたたかれても、ミスで先行されても、悲壮感でガタガタになったりせず、落ち着いて前を向けるのでしょう」。

 しかし、おっさんにも欠点はある。影山氏は「おっさんの欠点はすぐ調子に乗ること。おっさんだけで頑張りすぎず、おっさんが若手にええとこ取らせるのが大事」とアドバイス。そして「厳しい戦いの最後の最後にはおっさんの経験が生きる。次のポーランド戦の勝ち点3を信じてます」とエールを送った。【清水優】