西日本豪雨の被災地では各地で気温30度を超える中、安否不明者の必死の捜索が続いた。11日、広島県呉市で新たに4遺体が発見されるなど、共同通信の集計で死者は12府県で計174人、安否不明者は計62人に上る。

 住民の団結力が、道を切り開いた。10日夕まで「陸の孤島」となっていた広島県呉市の仁方町戸田(とた)地区。海沿いに約100世帯300人が暮らす同地区は土砂崩れで、海に面した道路が通行不能になった。断水も起こり、小さな集落は完全に孤立。住民は野菜や井戸水を分け合い、孤立解消を待ったという。

 海路から多少の物資は届くようになったが、長引く孤立に高齢者の体調も心配された。地区自治会長の白井為典さん(62)は「緊急車両だけでも通したい」と住民に協力を呼びかけた。すると住民の約3分の1に当たる約100人が集結。6時間をかけ、道をふさぐ土砂約100メートルを農作業用スコップなどでかき出していった。猛暑の上、断水の影響で飲み水にも不自由する中、泥だらけで道を開けた。白井さんは「80歳のおばあさんまで参加してくれた。うれしかった」。地区ではほとんどが顔見知り、だからこその団結だった。

 作業のかいあって消防車が通行できるようになり、被害状況の確認も進んだ。4日間孤立したが、同地区では体調を崩す人はいなかったという。【奥田隼人】