平成の将棋界でトップを走り続けた羽生善治竜王(48)が21日、無冠に転落した。山口県下関市「春帆楼」で行われた第31期竜王戦7番勝負第7局で午後6時49分、167手で挑戦者の広瀬章人八段(31)に敗れた。対戦成績3勝4敗で、防衛に失敗した。同時にタイトル獲得通算100期獲得はならず、27年ぶりの無冠となった。

恩師の将棋人生の花道を飾ることはならなかった。羽生善治九段が小学校2年生から通った「八王子将棋クラブ」(東京・八王子市)。イロハから手ほどきした席主の八木下征男さん(75)は、24日を最後に同クラブを閉じる。「100期達成で帰って来てほしい」の願いはかなわなかった。

「今年は国民栄誉賞をいただくなどいつもとは違う年だったと思う。うちに来た当時から何事にも淡々としていた彼でも自分のペースを保てなかったのかもしれない」と思いやった。

1977年(昭52)3月に開所し、翌年に羽生が門をくぐった。8年前から人工透析を受けるなど体調面の不安と、ビル改修工事を機に決意した。羽生には5月に閉所を直接伝えると「いつも通り淡々としてました」。人工透析を終えた直後の痛む体をさすりながら「彼らしく、いつも通り気持ちを切り替えてまた、やってくれるでしょう」と静かに笑った。