「おもてなし攻勢」のクライマックスは、新鮮素材の炉端焼き-。安倍晋三首相とトランプ米大統領は26日夜、東京・六本木の炉端焼き店で約1時間、夕食をともにした。

来日したハリウッドセレブ御用達の店で、両首脳は夫人を交え、じゃがバターや和牛ステーキを堪能した。首相の「接待攻勢」の効果か、トランプ氏は日米貿易交渉の妥結を、夏の参院選後に先送りすると突如表明。国益を左右する貿易問題の中身を、選挙の間は明かさないという「出来レース」感に野党は猛反発している。

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首相がトランプ氏との夕食会に選んだのは「六本木田舎家 東店」。カウンターに昭恵夫人、メラニア夫人とともに座った。ファーストディッシュは、グリルされたじゃがいものバター添え。じゃがいもは日本はもちろん、アイダホ州など米国の主要農産物。首相サイドの気遣いは明確だ。外務省によると、メニューはほかにサラダや若鶏の串焼き、和牛のステーキ、バニラアイスだったという。

「田舎家」は、来日したハリウッドスターの御用達で知られ、トム・クルーズやジョニー・デップ、シャーリーズ・セロンらも足を運んだ。六本木に2店、トランプ氏の地元ニューヨークに支店がある。ハリウッドスターを何度もアテンドした映画関係者によると、野菜や魚、肉などの素材がテーブルの上のざるに入れて並べられ、客は好きなものを注文。法被とはちまき姿の従業員が炭火で焼いた後、大きな木のしゃもじに乗せて客に提供するスタイルが、人気という。

「素材の良さが分かるシンプルな調理。焼く方が交代する際は客も参加して三三七拍子で送り出し、もちつきパフォーマンスもある。外国の方にとても人気が高く、リピーターも多い」という。この関係者が店を訪れた際の料金は、1人当たり3万5000円はくだらなかったそうだ。

前回来日時の夕食は、鉄板焼き。今回、日本政府は「日本文化を感じられる居酒屋で、リラックスした雰囲気での意見交換」を目指した。夕食会は約1時間15分で、トランプ氏は冒頭「すばらしい時間を過ごしている」。首相とトランプ氏はこの日朝、昼、晩と3食をともにし、強い結びつきを強調。店の関係者によると「かなり和んだ」雰囲気の食事だったという。

店外では周辺の道路の交通が止められたり、歩道は大勢の警官と見物人で、ごった返した。会食を終えたトランプ氏は、大統領専用車「ビースト」から手を振り、夜の六本木を後にした。【梅田恵子、中山知子】