パラリンピックでメダルを獲得したベルギーの車いす陸上女子選手、マリーケ・フェルフールトさんが22日(日本時間23日)安楽死を選択し故郷ディーストの自宅で医師の投薬を受け亡くなった。40歳。進行性の脊髄疾患に苦しみ、安楽死の希望を公表していた。

フェルフールトさんは14歳で脊髄疾患にかかり、下半身不随となったが、車いす陸上などに精力的に取り組んだ。12年のパラリンピック・ロンドン大会100メートルで金、200メートルで銀、16年のリオデジャネイロ大会では400メートルで銀、100メートルで銅メダルを獲得した。

一方で、脊髄疾患による激痛に苦しんできた。リオ大会中の会見で、患者の意思により医師が薬物などで死に導く安楽死を申請し、08年に許可されていたことを公表。「痛みは気絶するほど。耐えられないと感じたら自分で(死を)決められる。ただやりたいことがたくさんある。日本に行ってみたい」と話した。翌17年には来日し、広島平和記念資料館などを訪問した。

ベルギーでは安楽死が合法化されているが、第一に家族らの承認を得て許可証を取得。実行される前には、薬物を投与する担当医師と別に、精神科医を含む3人の医師の面談を受けて同意を取り付けるなど、制度は厳格に運用されている。

ベルギーの新聞「ニュースブラッド」は、フェルフールトさんが22日に自宅に家族と友人を招き、別れを告げた後、大好きなワイン「カバ」を飲み、午後8時15分、ウィム・ディステルマン医師の投薬を受け亡くなったと報じた。同医師はがんと安楽死の権威で「信じられないほど多くの人が集まった。安楽死は彼女の究極の願い。非常に穏やかで平和だった」と語った。