台風19号の直撃から1カ月あまりが経過した。甚大な被害を受けた宮城県丸森町は、6月に東京オリンピック(五輪)・パラリンピックのホストタウンに指定された中、被災した。迎え入れるアフリカ中部のザンビアとは、町づくりの一環として農業技術を伝える交流を2010年から続け、農業研修生も受け入れてきた。ホストタウンと交流事業、双方を円滑に進めるため、町は復旧に全身全霊を傾けている。

丸森町は、耕野(こうや)地区を中心に、貧困に苦しむザンビアにキノコ農家や養蜂家を派遣するなど農業技術支援の協力をしてきた。16年からは国際協力機構(JICA)の草の根技術協力プロジェクトの地域活性化特別枠を活用し、昨年までの3年間に18人の研修生を受け入れた。日本はスタジアム整備に資金協力し、青年海外協力隊員がサッカーや柔道の指導を行うなどザンビアのスポーツ振興に寄与してきたが、丸森町の実績、友好関係が五輪・パラリンピックのホストタウンにつながった。

その中、台風19号が町を襲った。激しい暴風雨で町内の各所で崖崩れが発生。阿武隈川の支流の内川で10カ所、新川と五福谷川でそれぞれ4カ所が氾濫し、川の脇を走る県道が路盤ごと流された。町役場の山本勝宏危機管理官は「とにかく土砂をどけて、車が通ることができる道路を確保しないと」と現状を説明した。

8カ月後に迫る五輪では、地域交流や講演会などを予定しているが、企画財政課の坂元広嗣さんは「どう準備を進めるのか。ストップしている状態」と吐露。農業研修生を例年、受け入れるのも9月で、1年を切っているが、山本さんは「町民が被災していること含め難しい部分もあるが、町としてどこまで対応できるか考えていく。全て、これからです」と前を向いた。

◆被災状況 丸森町は11日時点で、人的被害は死者10人、行方不明者1人、けが人は軽傷2人と発表した。道路の被害は341カ所に及び、被害額は64億2830万円に上った。河川の被害は338カ所で、被害額は47億7647万円。いわき市は10月31日時点で、人的被害は死者8人、軽傷者29人と発表。河川被害は、計62河川で護岸崩落などが142カ所に上った。