安倍晋三首相の在職日数が20日、第1次内閣と合わせて計2887日となり、戦前の桂太郎を抜いて、憲政史上歴代1位となった。歴史に名を残す晴れ舞台に身を置くはずが、私物化疑惑が問われている「桜を見る会」問題が直撃し、お祝いムードはない。野党の弱さも背景に、モリカケ問題や閣僚ドミノ辞任など危機的場面も巧みにかわし、1強長期政権を築いてきたが、記念の節目を「桜爆弾」とともに迎えた首相。過去最大級といわれるピンチを、乗り越えられるのか。

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首相は20日、在職日数最多で、日本政治史に名を刻んだ。前日19日の衆院本会議では、首相に対する野党の激しい批判が飛んだ。

公的行事の「桜を見る会」に後援者約800人を招き、会費5000円で開いた前夜祭の会計の不透明さも表面化。官邸で記者との一問一答で説明はしたが、明細書がないと主張するなど全員が納得できる内容ではない。10月に閣僚から更迭した菅原一秀、河井克行両氏について「自ら説明責任を果たすべき」と述べた首相に、同じ行為を求める野党。後藤祐一議員は、首相が超えた桂太郎内閣の末期、のちに「憲政の神様」と呼ばれる尾崎行雄が内閣の弾劾を求める演説を行い、15日後に内閣が退陣に追い込まれたと指摘。「予算委員会も開かず説明責任も果たさない安倍首相を、強く弾劾する」と息巻いた。

第1次内閣では「政治とカネ」や失言による閣僚のドミノ辞任で、体調悪化も重なり1年で退陣した首相。その後政権交代した旧民主党政権への国民の心もとなさから、党総裁に再登板後の12年冬の衆院選に勝ち、首相は再び総理に返り咲いた。その後の国政選挙で6連勝。第2次内閣でも閣僚の辞任が続き、首相夫妻の関与や首相の「ご意向」が疑われ、大ピンチに陥った森友&加計学園問題も、巧妙に乗り切ってきた。

まとまれない野党、首相を脅かすような「ポスト安倍」の不在など、安倍1強多弱という「他力」の側面が、長期政権の1つの要因だ。しかし9月の内閣改造後、政治とカネの問題で2閣僚が更迭され、任命責任が問われた。「桜を見る会」も、首相自身の問題だ。政界関係者は「もしかしたら、今が過去最大のピンチではないか」と話す。しかし首相はこの日、「桜」をめぐる報道陣の問いには一切、答えなかった。

長期政権だが歴代首相に比べて実績が乏しく、「質より量」とも指摘される首相。21年9月までの自民党総裁の任期は、2年を切った。そんな中訪れた大きなピンチ。乗り越えられるのだろうか。【中山知子】