少子化に歯止めがかからない。厚労省は昨年末に19年の人口動態統計の年間推計を発表。出生数は86万4000人で、1899年(明32)に統計を開始以降、初めて90万人を下回った。要因に挙げられるのが、晩婚化と未婚率の上昇だ。結婚に思い悩む自らを描いた映画「アラフォーの挑戦 アメリカへ」を製作した女優松下恵(38)がこのほど、日刊スポーツの取材に、海外の施策を踏まえた少子化対策の必要性を語った。

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厚労省の予測より2年早く、出生数が86万人台に落ち込んだことに国も危機感を募らせる。内閣府は昨年12月23日に公表した「第4次少子化社会対策大綱策定に向けた提言」で、出生率低下の主な要因は未婚化と晩婚化と指摘。結婚や出産、資金不足や仕事への障害など、子育ての実現を阻む要因が複雑に絡み合っていると分析し「国難とも呼ぶべき状況」とした。

松下は、30代半ばを過ぎて結婚を勧める声が多くなる日本に生きにくさを感じ、18年に米国に留学した中で結婚、出産について米国人に取材し、考える自らを映画にし昨年4月に公開した。映画を女性学の教材にしたいと米国のチャップマン大から要請を受け、同10月にディスカッションが開催。女性の地位が向上し社会に進出する中で、結婚にとらわれない男女の形が増えているとの意見が出た。

松下が着目したのは、フランスの施策だ。1人の女性が生涯で何人の子どもを生むかを示す合計特殊出生率が95年に過去最低の1・65人まで落ち込んだが、16年は1・92と欧州トップクラスに回復。日本の1・32を大きく上回る。

要因の1つに、婚外子の増加が考えられる。フランスは16年に婚外子の割合が59・7%に上った。その背景にあるのが、99年の民法改正時に認められた「連帯市民協約(PACS)」だ。成年の2人が安定して共同生活を営むための契約で、税控除や社会保障で結婚に準じた権利が保証され、事実婚が広がった。

結婚以外の男女関係を認めない伝統的家族観が根強い日本で、PACSは現実的ではないとの声もあるが変化の動きもある。昨年12月の与党税制協議会で、配偶者と離婚、死別したひとり親が対象の「寡婦(寡夫)控除」を未婚者にも適用し、所得税や住民税を軽減する支援策が合意された。

松下は「男女の選択肢が海外にはたくさんある。日本は結婚前の妊娠を白眼視するけれど、PACSのような制度が出来れば少子化の歯止めにつながるのでは」と語った。【村上幸将】

◆海外における結婚以外の男女の形 フランスでは、仕事など互いのライフスタイルを維持したい男女がPACSを選択し、子どもが出来て結婚を選ぶケースもある。同様の制度を取るのがスウェーデンで、87年に同居を公的に認める「サムボ法」が88年から施行された。サムボは登録する住所が同じで、継続して共同生活を営み、性的関係をもつカップルのことで子供は結婚した夫婦の子どもと法律上の差別はない。70年代に合計特殊出生率が1・6台に下がり少子化問題が叫ばれたものの、88年には1・96に増加した。