東京五輪の聖火リレーで、原爆ドーム(広島市中区)前の元安川を日本泳法で泳いでトーチをつなぐ“聖火スイマー”に選ばれた広島市東区、会社員で被爆2世の河本明子さん(50)が13日、同所で行われた寒中水泳大会に参加し、妙技を披露した。

寒中水泳大会は河本さんが所属する「神伝流広島游泳(ゆうえい)同志会」の恒例行事で、今年で72回目。広島の冬の風物詩には、12歳から76歳までの男女45人が参加した。

この日の気温12度、水温11度。河本さんが扇を足の指に挟んで回す「扇返し」を披露すると、観衆から「あっぱれ!」の声援が飛んだ。さらに泳ぎながら和傘を回す「諸手(もろて)日傘」も披露した。

終了後、河本さんは「非常に緊張しましたが、気持ちよく泳がせていただきました」と笑顔を見せた。小学生時代からほぼ毎年、参加しているが「今年はいつもと違う思いで泳ぎました」。

5月18日には原爆ドーム前で聖火を受け継ぎ、そばの雁木(がんぎ)から元安川へ入り、あおり足という技法で重さ約1・2キロのトーチを持つ手と顔を水面から出し、約50メートル先の対岸まで泳ぎ切り、聖火をつなぐ。

河本さんは被爆2世。被爆した父や祖父母からは多くの人が水を求めて元安川にたどり着き、わずかな安らぎを得て息絶えたことを聞かされてきたという。

“聖火スイマー”に決まってからは、ペットボトルに水を入れトーチと同じ重さにして練習をしている。「体力のなさを実感しています。いまは緊張感と不安でいっぱいですが、被爆された方の思いを背負い、最後まで努力して精いっぱい、泳ぎたい」と意気込んだ。