日本の地に脈々と息づいてきた、桜。新型コロナウイルスが世界中に暗い影を落としている今だからこそ、あらためて桜の美しさ、力強さ、人との関わりを感じてみたい。「それでも、桜は咲く」と題した写真連載を今日からスタートします。お花見気分でお楽しみください。【桜プロジェクト取材班】

樹齢500年といわれ、福島県いわき市の市天然記念物に指定されている小川諏訪神社の御神木・シダレザクラ。満天の星空が輝く26日夜、本殿にわずかな明かりがともり、静寂が広がる境内で撮影を試みると、いっぱいに枝を伸ばした幽玄な夜桜が浮かび上がった。

例年は夜桜のライトアップが行われるが今年は新型コロナウイルスの影響で中止に。1日で約2000人の参拝者が訪れるというが、約2時間の撮影の間に訪れた参拝者はわずか3人だった。

御神木は、創建700年の歴史を持つ同社の本殿隣に植えられたエドヒガンザクラ。20年ほど前、氏子ら有志で肥料をまいたところ見事な花を咲かせた。話を聞きつけた地元テレビ局がお天気コーナーの中継で桜をライトアップしたところ、夜桜の名所としてその名が一躍県内に知れ渡るようになった。

同社の近くには、福島第1原発の事故で避難を余儀なくされた人たちが身を寄せる「復興公営住宅」も立ち並ぶ。白土智宣(しらと・とものり)禰宜(ねぎ、40)は、「支え木があると、木が元気になって新しい枝が出てくるんです。人間も一緒ですかね」。御神木は避難者と地元の人との交流の場にもなっていると言い、「桜の木の下で、あいさつをしたりお話をしたり交流を深めてもらえたら」と目を細めた。

<撮影データ>3月26日午後6時55分~午後8時22分撮影 ニコン「D5」 17-35ミリ(焦点距離17ミリ) ISO感度400 シャッタースピード30分の1 絞り9 156枚の写真を編集(比較明合成) 桜にストロボ照射(撮影・加藤諒)