博多の風物詩のにぎわいが消えた。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、福岡名物の屋台が窮地に陥っている。

本来なら、夕方から営業が始められ、仕事帰りの会社員や観光客らでにぎわう。プロ野球ソフトバンクのホーム試合観戦後、ファンが立ち寄りホークス談義で盛り上がる街のシンボルでもあった。

だが初の緊急事態宣言が発表された7日、屋台が密集する福岡市の繁華街、天神や中洲エリアは人通りも少なく、自粛ムードで営業もまばら。さらにプロ野球開幕延期の影響もあるのか、従来の活気は失われていた。1日平均100人が訪れていた天神で創業53年目の店主は「今日の営業は(周辺の)8軒中2軒だけ。昨日(6日)は28人で、こんなにお客が少ないのは初めてです。週2日の定休日と正月、盆、台風以外は休んだことがないが、明日(8日)から休みます。休んだ分、補償してほしい」と懇願した。

福岡市では、103軒の屋台が営業している。だが博多エリアの屋台を管轄する博多移動飲食業組合によると「3月の終わりごろから(営業自粛で)休む屋台が目立ち始めた。先週の土日(4、5日)は、(博多の)42軒で営業していたのは8軒です。人通りも全然ないし、お客も入っていません。天神地区もかなり休んでいると思う」という非常事態だ。

福岡も含まれる緊急事態宣言発令で、さらなる営業自粛を強いられる可能性が高い。それだけに同組合関係者は「営業を自粛する屋台が増え、屋台がゼロになるかもしれない。寂しいが仕方ない」と嘆いた。

5月の大型連休中に行われる予定だった人出200万人超の「博多どんたく港まつり」が中止となった。コロナ禍に福岡の伝統も奪われた。【菊川光一】