安倍晋三首相は18日夕、政権の判断で検察官の定年延長が可能となる規定を盛り込んだ検察庁法改正案の今国会成立を断念したことについて「国民のみなさまのご理解なくして前に進めていくことはできないと考えている」と述べた。

官邸で報道陣の取材に答えた。

首相は「国民のみなさまの声に十分耳を傾けることは不可欠。ご理解を得て進めていくことが肝要だ」と述べ、この日会談した自民党二階俊博幹事長と「今後の対応方針について、考えが一致した」と説明した。

今回の改正案成立断念の背景には、SNSを中心に、世論の反対の声が一気に拡大したことが大きい。首相は「この法案には、国民のみなさまからさまざまなご批判があった。そうしたご批判にしっかり答えていくことが大切なんだろうと思う。趣旨や中身について、丁寧にしっかりもっとよく説明していくことが大切だ」と述べ、説明が不足していたことを認めた。

その上で「さまざまな批判をいただく中で、大切なことは国民の理解をいただく中で(審議を)進めることができるよう、これからもそうした責任を果たしたい」と述べた。

首相は2分あまりの取材の間に、「国民」という言葉を何度も繰り返した。与野党が新型コロナウイルス感染症対策に当たるさなか、どさくさにまぎれて検察官の定年延長を可能にする法案成立を強行しようとした結果、安倍1強政権の強引な意思決定スタイルが通じず、国民の反対の声に押し切られた印象が、強くにじんだ。

これまでにない形で、政権の「肝いり法案」が成立断念に追い込まれたことで、今後の首相の政権運営に打撃となるのは確実だ。