新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、学校は長期休校となり、社会のありよう、日常は一変した。予想不可能な将来に直面したいま、必要な力は? 将棋の第91期棋聖戦の挑戦者決定戦で勝ち、最年少タイトル挑戦を決めた藤井聡太七段(17)の幼少期からの「学び」にはコロナ時代を生き抜く、多くのヒントがある。東西の将棋担当記者がこれまでの取材をもとに探る第2回は「集中力」です。

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4月に新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が出され、愛知県在住の藤井聡太七段(17)は長距離移動を伴う東京、大阪での対局ができなくなった。第91期棋聖戦の挑戦者決定戦で勝ち、最年少タイトル挑戦を決めた記者会見で、天才高校生棋士は約2カ月間の「巣ごもり」生活をこう振り返った。

「しっかりと自分の将棋に向き合うことができた」

この探究型の「学び」を支えたのは「集中力」だった。好きなことを好きなだけやらせる-。藤井家の教育方針のもと、「好き」を極めることで、藤井少年の集中力は自然と養われていった。

藤井と戦った相手が口にするのは「集中力が続く時間が長い」。盤上での驚異の集中力はプロ棋士もうならせる。

将棋を始めたころ、迷路づくりにも熱中した。新聞広告の折り込み広告の裏面いっぱいに描いた。スタートとゴールを決め、どの道を残し、どの道を分岐させるのか。将棋と似ている感覚があったのか、母裕子さん(49)によると「気が済むまで何時間でも集中して書いていた。大人でも解けないような難しい迷路もあった」。黙々と取り組む姿を母は静かに見守った。

コロナ禍の長期休校では、勉強に不安を抱える児童・生徒、保護者も多かった。集中力が続かず、はかどらない自宅学習に、ついつい親が「勉強しなさい!」。だらだらと長時間、机に向かうよりも、短時間でも、気持ちを切り替えて集中することが大事だといわれる。コロナ時代には自律的な学びが、これまで以上に求められる。

並外れた集中力で「学び」を続けた藤井少年。その中で自らが「課題」を見つけ、解決していく力をつけていった。コロナ禍で社会のありよう、人との関わり方は変化を余儀なくされた。コロナ時代を生き抜くヒント。小学時代、学校の授業で学んだ内容は、その場で理解し覚えていった。藤井はかつてこう話した。

「45分の授業は5分あれば理解できる」

次回は「脳力」についてです。(つづく)

◆渡辺明棋聖VS藤井聡太七段の第91期棋聖戦5番勝負日程 ▽第1局=6月8日(東京・将棋会館)▽第2局=同28日(東京・将棋会館)▽第3局=7月9日(東京・都市センターホテル)▽第4局=同16日(関西将棋会館)▽第5局=同21日(東京・将棋会館)。