将棋の最年少タイトルホルダー、藤井聡太棋聖(18)が最年長タイトルホルダー、木村一基王位(47)に挑む第61期王位戦7番勝負の第3局が4、5の両日、有馬温泉(神戸市北区)の老舗旅館「中の坊瑞苑(ずいえん)」で行われ、先手の藤井が木村を破り、3連勝で史上最年少2冠にあと1勝とした。王位を獲得すると、史上最年少での八段昇段の記録を同時に達成する。第4局は19、20の両日、福岡市の「大濠公園能楽堂」で行われる。

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藤井さんは矢倉の最新形で、作戦通りに展開して攻めがつながりました。鮮やかに収束させましたし、「聡太流」での完勝でした。9手目先手2五歩と突く形をこれから覚えておくといいかもしれません。以前から「先手で矢倉を」と言い続けてきましたが、しっかり指しこなせています。27手目に先手3七桂も作戦として面白く、感心しました。今後、この将棋が多く見られるかもしれません。

木村さんは封じ手(46手目後手2三歩)直後の48手目、後手6四歩としましたが、これでは迫力がありません。ここは後手8四銀と出た方が力強かったでしょう。90手目に後手6二銀と「専守防衛」で打った場面も、後手4二歩と受けるべき。ギリギリの勝負になっていたと思います。「千駄ケ谷の受け師」と言うには、らしからぬ将棋で、チャンスがなかったですね。かど番で迎える第4局は先手番で臨めますし、第2局(7月13~14日、札幌市)と同様に相掛かりに持ち込みたいでしょう。あれは、勝っていた将棋でしたから。

これで挑戦者の3連勝ですか。しかも、藤井さんは竜王戦の決勝トーナメントですでに姿を消していますから、「ここ1本」に目標を絞ってくることでしょう。今の勢いなら、4連勝で一気に「2冠&八段昇段」まで行く確率がかなり高いと思います。(加藤一二三・九段)