新型コロナウイルス感染拡大収束の見通しがつかない中、日本の観光産業も大打撃を受けている。国内外で多数の宿泊施設を運営する星野リゾート・星野佳路代表(60)が提唱するマイクロリゾートによる国内旅行の活性化を紹介した前編に続き、後編では同氏が、コロナ禍で見えてきた未来の希望を語る。

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星野氏は観光産業の生き残りのために国内旅行の活性化が必要と考えており、中でも自宅から1~2時間圏内の近隣への観光旅行「マイクロツーリズム」の充実の必要性を強く感じている。しかし国内旅行が盛んになると課題も浮上する。大型連休やお盆、年末年始や3連休などの時期にピークが集中し「3密」が発生する可能性が高くなる。同氏は「高速道路が混雑し、宿は3倍の値段をつけて(利用客に)『高い』と言われて満足度が下がってしまう」と懸念する。

だからこそ、かねて提唱してきた「休暇分散化」がカギを握るという。欧州では既に取り入れられており、例えばフランスは国を地域分けして学校の春休みと冬休みをずらし、ドイツも地域ごとに夏休みを分散している。「極端に言いますと日本もゴールデンウイークを2500万人ずつ交代で取るなどして休みを分散するというやり方もあります」。実現すれば、渋滞緩和や宿泊費の高騰を防ぎ、長期滞在もしやすくなる。手軽なマイクロツーリズムで旅行回数が増える可能性もある。

観光業界にはコロナ禍以前から抱えていた問題がある。「収益を良くしていく時のポイントは閑散期対策なのです」。例えば沖縄は年間半分がオフシーズン。各地の宿泊施設も平日は稼働が圧倒的に低い。観光需要は大型連休や夏休み、年末年始、3連休などに集中しており、その約100日で黒字を出し、閑散期の赤字を埋める仕組みになっているが、極めて不安定だ。

ところがコロナ禍という逆境に置かれ、打開策が見えてきた。「ワーケーション」だ。コロナ禍で推奨され始めた、休暇を過ごしながらテレワークで働く生活様式だ。「例えば、木曜が祝日なら金曜にワーケーションできる環境を提供できれば、土、日と合わせて4日間滞在していただける。閑散期を埋めるものすごく大きな力になる。お客さまにとっての1日あたりのコストも下がります。日本は交通費が高いですから、1泊2日の旅行ですと1日あたりの交通費が相当かかりますが、4連泊できれば、1日あたりの金額はかなり下がります」。「連泊」には、提供する食事のバリエーションを広げる必要などの課題もあるが、ワーケーション自体には「ものすごく大きなポテンシャルがある」とみている。

これに、マイクロツーリズムの手軽さが結び付けば、リピーターが増え、観光業界が抱えてきた「年間を通して平準化した需要」という課題の解決に大きく前進する可能性があるという。「テレワークやワーケーションは、コロナ収束後も残ると思います」といい、長期を見据えた取り組みと考えている。

ピンチをチャンスに。ウィズ・コロナ時代に大切な経営姿勢だと感じる。【近藤由美子】