東京都は10日、新型コロナウイルス新規感染者が602人確認されたと発表した。600人超えは初めてで、過去最多(今月5日の584人)を更新した。小池百合子都知事は感染予防の徹底を呼び掛けたものの、飲食店への時短要請など現在呼びかける感染拡大防止策の効果は、見通せないまま。会議では、医療関係者が都内の医療提供体制について「逼迫(ひっぱく)」の言葉を何度も繰り返し、一層の警戒を促した。

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東京の新規陽性者数が、とうとう600人を超えた。小池知事は「初めて陽性者が600人を超えたが、一方で重症者数がいちばん大きなポイント。なんとか抑えている医療関係者の皆さまには心から敬意を表したい」。感染者数より重症者数重視という、従来の姿勢を貫くしかなかった。今月8日に1都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)で発表した共同メッセージを挙げ、都民には「『ひ・き・し・め・よ・う』のご協力をお願いいたします」と呼びかけただけだった。

今月17日まで、酒類を提供する飲食店への営業時間短縮や「Go To トラベル」の65歳以上一時停止措置も要請している。都医師会の猪口正孝副会長は、この日開かれたモニタリング会議で「効いてきているのか、続けないといけないのか、判断しづらい」と言及。「今はやることはやった。そして結果を待つ。早く患者さんが減ってくれることを待っている」という言葉には、対策は尽くした中、今後を見守らざるを得ないという心境が露呈した。

医療提供体制の警戒度は、深刻な方から2番目の「強化が必要」を維持したが、会議では「通常医療との両立が困難な状況となっている。医療提供体制が逼迫(ひっぱく)し始めている」。さらなる警戒を促し、「逼迫」という言葉を5度も繰り返した。都では重症用病床200床を含む計3000床を確保しているが、入院患者数は1800人を超える高い水準まで増え、新規陽性者の急増で医療機関への受け入れ調整も難航している。猪口氏は「まだ(医療体制が)大きな破綻を来した事象がない」と説明はしたが、人工呼吸器管理が必要な重症患者が複数入院している医療機関などの負担増も著しいのが現状だ。

検査数が増えるほど感染者数も増加していくものの、比例して入院者数が増えていくことも必然だ。小池氏が唱える「5つの小(こ)」を含め、個人の努力に頼るだけでない一手が問われている。【鎌田直秀】