日刊スポーツは「パワーアップ2021 上向きニュース21選」と題した企画で、気持ちが高まるパワーアイテム、ワードなどを紹介しています。第7回は、冬の間、深い雪の下で育つことでより甘みを蓄え、栄養価の高い状態で早春に収穫される新潟県津南町の「雪下にんじん」です。

津南町は、日本有数の豪雪地帯で知られるが、同町役場農林振興課によると、雪下にんじんができたきっかけは「偶然」だったそうだ。大雪で収穫がかなわなかったにんじんを春になって雪の中から掘り出すと、強い甘みを持っていることが判明。1970年代後半ごろから試験的な栽培が始まり、生産や販路を拡大。生産量は年間632トン(2017年)になった。

7月下旬から8月にかけて種をまいて生育させ、降雪後も収穫せず、3カ月以上雪の下で栽培。3月に入ると畑の除雪を始め、雪解けを待ってにんじんを掘り出す。19年には、国の地理的表示(GI)保護制度による特定農産物に登録され、町を代表する農産物の1つに成長した。

雪下にんじんは雪の下でじっくり「熟成」されることでアミノ酸の含有量が増え、甘みやうまみが増すという。にんじん特有のくさみもない。雪下にんじんのブランド「雪くれない」を使ったジュースも人気が高く、抗酸化作用を持つ成分リコピンは普通のにんじんの約20倍あり、カロテンも豊富。さらっとした味わいの「高機能飲料」で、女性誌にも取り上げられた。

にんじんを育む雪の量も意味を持つ。昨年は例年より少雪。風味には変わりがなかったものの関係者をやきもきさせたようだ。今年は平年並みで、27日午前9時の役場周辺の積雪は230センチ。甘~いにんじんの収穫が期待されている。

現在「ステイスノー」中の雪下にんじんたち。雪解けとともに、町に春の到来を告げる収穫の時を待っている。桑原悠(はるか)町長(34)は「大雪の苦労はありますが、津南にはそれ以上に良いところがたくさんあります。その1つが、甘くてみずみずしい雪下にんじん。これも雪のおかげですね」と話している。