64年東京オリンピック(五輪)から「東京2020」へ、思いをつないだ。

東京五輪の聖火リレーは4日、岐阜県内を巡り、下呂温泉の老舗旅館「水明館」の瀧英祐さん(50)が、各務原市で走った。水明館は64年当時、日本で唯一の温水プールがあったことで、父の多賀男さん(84)によれば約1週間の日本代表強化合宿を行ったことがあると言う。英祐さんは「今思えば、何十年も前に下呂温泉まで来て練習していたんだなあと感慨深いものがある。聖火ランナーで私も五輪に関われたことで縁があると感じた」。この日、都内では競泳日本選手権が開催され、白血病を乗り越えた池江璃花子らが、東京五輪の出場権をつかんだのも運命的だ。

水明館は1932年(昭7)に開業。上皇ご夫妻が宿泊に訪れた歴史もある。当時、温泉を利用した25メートルプールがあった場所は、大きな増改築を経て、現在は美しい池が優雅な日本庭園に様変わりしている。「当時の練習風景だったりが写真などで残っていないことは残念です。取材なども下呂温泉までは、来なかったのでしょう」と英祐さん。自身の聖火リレーは娘の前で力強く走り、しっかりと記憶と記録に残ったことも喜びだった。

1年延期となった東京五輪。57年前の競泳日本代表は、福井誠、岩崎邦宏、庄司敏夫、岡部幸明でつないだ男子800メートルリレーで銅メダルを獲得した。「メダルをとることも大切だと思いますが、努力していることを本番で発揮してほしいです」。草津、有馬と並ぶ日本3大名泉の下呂温泉から、聖火を通じてエールを送った。【鎌田直秀】

◆4日の聖火リレー 岐阜県2日目は下呂市からスタートし、お笑いコンビANZEN漫才みやぞんが大垣市に登場。岐阜市では本紙野球評論家の和田一浩氏、俳優の伊藤英明、00年シドニー五輪女子マラソン金メダリスト高橋尚子氏らが聖火をつなぎ、スケートショートトラックで3大会連続冬季五輪出場の勅使川原郁恵氏が最終走者を務めた。5日は政令指定都市初となる名古屋市を含む愛知県へ。サッカー元日本代表GK楢崎正剛氏らがトーチを手にし、ランナーが熱田神宮や犬山城など観光名所も走る。