東京・池袋の都道で19年に乗用車が暴走し、松永真菜さん(当時31)と長女莉子ちゃん(同3)が死亡した事故で、遺族の松永拓也さん(34)が事故から丸2年を迎えた19日、現場前に建立された慰霊碑に献花した。松永さんは「2人に胸を張って、いつか会えるように生きていくから」と涙で誓い、交通事故撲滅にまい進していくと誓った。

事故が発生した午後0時25分過ぎ、松永さんは慰霊碑に花を手向け、手を合わせて妻子に語りかけた。

「愛しているからこそ、2人の命は無駄にしないという思いで生きてきた。生きていくと決めたから、心配しないでくれと。誰かの命が守られるように、この先も生きていくから、と」

事故から5日後に会見を開いた。運転していた旧通産省工業技術院元院長の飯塚幸三被告(89=自動車運転処罰法違反罪に問われ公判中)への厳罰を求め、同7月から集めた署名は39万筆超に上った。国交省など官庁にも精力的に足を運んだ。全ては「コンマ何秒かで命が終わり、人生も変わり日常も奪われた。こんな理不尽なことはない。交通事故ゼロ社会にしたい」という一心からだ。

19年に自主返納した高齢者は最多の60万人超に上った。事故を受け新型国産車を対象に自動ブレーキ搭載が義務化され、来年6月までに施行される改正道交法では、免許更新通知が届いた時点から過去3年間に違反歴がある75歳以上の高齢者への実車試験も義務化と世の中も変わってきた。

8日には、1日ごとの交通事故の統計を取り始めた1968年(昭43)から53年で初めて交通事故死が0になった。松永さんは「事故と私の活動で変わったとは思っていないが、着実に進んでいる。2人は『頑張って、応援してるよ』と言ってくれていると思う」と、涙ながらに2年を総括した。27日の公判では飯塚被告への被告人質問が行われる。【村上幸将】

◆池袋暴走事故 19年4月19日午後0時25分ごろ、東京都豊島区東池袋4丁目の都道で、乗用車が交差点2つを含む約150メートルにわたって暴走し、赤信号を無視して横断歩道に突っ込んだ。自転車に乗っていた松永さん母子が死亡し、運転していた飯塚元院長と助手席の妻を含め、2歳から90代の男女10人が重軽傷を負った。