ペンギンたちの鳴く声と、消防車のサイレンが入り交じり、繁華街が騒然となった。東京・豊島区の飲食店「ペンギンのいるBAR池袋」で1日正午前、火災が発生。同店は都内で唯一、ペンギンの愛らしい姿に癒やされながら、本格的な食事や酒が楽しめる人気店だ。店内の大型水槽で飼育されているケープペンギン8羽も、従業員の冷静かつ迅速な対応により、ケージ入れられて店外へ出され、無事だった。

7階建てのビル1階にある店舗キッチンから出火。約1時間後の午後1時10分ごろ、鎮火されて大惨事は免れた。店内にいた1人がケガで病院に運ばれ、入院を余儀なくされた。同店は4月25日の緊急事態宣言発令後から店内での飲食提供は自粛し休業。大型連休中からテークアウトのみの営業を続けてきた。出火時はランチの仕込み中だった。

店舗内で清掃作業を行っていた従業員は「ケガ人が出ましたが、人もペンギンも無事で良かった。火災の中でもペンギンを外に連れ出してくれて、すごいと思う」と仲間に感謝。直後は電気もつかず、暗い中での復旧に追われたが、煙やにおいが消えてきた午後4時前には、ペンギンたちも大型水槽の“自宅”に戻された。従業員は「今後はこのようなことが2度とないように十分、気を付けないといけない」と反省。「なるべく早く、テークアウトから再開し、緊急事態宣言が明ける予定の6月21日以降は、みなさんにペンギンと一緒に飲食を楽しんでいただけたらうれしい」と再開に尽力する。

ペンギンは夫婦になると2羽で協力しあって子育てし、一生を添い遂げる習性がある。そんな理由から、恋愛や結婚のパワースポットとなった店内の「ペンギン神社」も無事。消火作業にあたった東京消防庁池袋署署員も「ペンギンちゃんは元気でしたね」と安堵(あんど)していた。【鎌田直秀】

◆ケープペンギン 南アフリカ共和国のケープ州などに生息するため命名された。別名アフリカンペンギン。体長約70センチ、体重約3キロで中型。白いおなかに黒のラインが1本で細く、目の周りがピンク色で白い部分が多い顔が特徴。鳴き声はロバに似ている。主食は魚類や甲殻類、イカ、タコ。潜水能力に優れ、100メートル以上を潜って獲物を捕まえる。生息数は減少。「ペンギンのいるBAR池袋」では従業員全員で勉強しながら飼育し、今年3月には4羽目のヒナ誕生に成功している。