札幌市街地にクマが出没し、4人がケガをする騒動となった。18日午前6時前、東区で高齢の男女2人が襲われ、その後、40代男性と男性自衛隊員1人もけがを負った。

同区内の陸上自衛隊丘珠駐屯地近くの茂みに潜んでいたクマは、地元猟友会により駆除されたが、住宅街にまさかの出没だった。専門家の北海道立総合研究機構・間野勉専門研究主幹は、クマの市街地出現に警鐘を鳴らした。

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ヒグマの生態に詳しい北海道立総合研究機構の間野勉専門研究主幹によると「今回のクマは石狩や当別の山から南下してきた個体である可能性が高い」と推測する。「この時期はクマの交尾期で、メスを巡ってオス同士の争いに負けたクマが、強いクマを避けて逃げるうちに市街地に出てきてしまったのではないか」とみている。5月末から6月初旬にかけ、札幌市北区の茨戸川緑地で目撃情報が寄せられたクマと同じ個体の可能性もあるという。水路などを使い、山間地から市街地にたどり着いたのではないかと推測する。

人を襲ったことについては「慣れない環境で人間と遭遇してしまい、パニック状態で自己防衛の本能から襲ったのではないか」と言う。また「付近に追い込める山がないことから捕獲は難しかった」と指摘し、駆除は最良の判断だったとしている。

道内では以前、冬眠から目覚める時期に実施されていた春グマ駆除制度があったが、絶滅の恐れがあるとして90年に廃止された。以降、クマの生息数は年々増えており、今後も「山から下りてきて市街地に出てくるクマがいるかもしれない」と警鐘を鳴らした。

対策としては「水路など野生動物の進路となるような場所に障害物を設置したり、生ゴミなどで餌付かないよう散らかさないこと」と話した。また、クマは見た目以上に俊敏で、遭遇した場合は背中を見せず、後ずさりしながら距離を取ることが重要で、背中を見せると本能的に襲ってくる習性があり「走って逃げようとしてもウサイン・ボルトでも勝てません」と警告した。