赤い首と黒光りする体が特徴の外来種「クビアカツヤカミキリ」が、サクラやウメの樹木を食い荒らす被害が拡大している。環境省は18年に生態系や農林水産物に被害を及ぼすとして特定外来生物に指定。12年に初確認された愛知を皮切りに東京、大阪など11都府県で被害が認められ、近年は関東地方を中心に急増中。埼玉県行田市では7月1日から市民限定の「駆除奨励品交付事業」として、10匹駆除ごとに行田市商店共通券500円分と引き換えるキャンペーンを開始する。

     ◇     ◇     ◇

赤いマフラーにも見える? 仮面ライダーのように敵を倒してくれるなら大歓迎だが、どうやら日本では悪役のようだ。

サクラの名所も数多く、被害が拡大している行田市は、クビアカツヤカミキリ駆除と地域活性化を両立させる。市環境課の坂本三夫さんは「17年度は10匹だったが、昨年度は208匹が確認された。ご家庭の樹木被害も多くなってきたので、周知と駆除と状況把握を目的に実施することになりました」と説明した。

駆除奨励品交付事業に参加できるのは市民限定。駆除日時、場所などを明記した申請書を提出の上、市内で駆除した10匹につき、500円分の「行田市商店共通商品券」1枚を支給する。期間は土、日、祝祭日を除く9月30日まで。特定外来生物は生きたままの移動や飼育は法律で禁止されており、死骸状態での持参が条件だ。1500匹分、7万5000円の予算を立てている。夏休みも含み、子どもたちも大活躍する可能性もあり「出前講座もやっておりますので、ご要望があれば学校などに出向いてお伝えすることも検討しております」と意気込んだ。

埼玉県環境科学国際センターでは18年から「クビアカツヤカミキリ発見大調査」と題して県民に呼びかけ、個体の生息範囲や被害状況を調査してきた。同センター研究推進室の三輪誠さんによると「駆除は踏み付けるのが良い。カミキリはキバを持っているのでかむことはあるが、人に関しての危害は少ないと思う」。昨春からの2シーズンは花見自粛の影響もあって人が寄り付かなかったことも繁殖を促進したと考えられている。木くずとフンが混ざった「フラス」と呼ばれるかりんとうのようなものが、樹木から排出されていることが被害の目印。「枯れ枝が落ちてしまうと、下にいる人は危ない可能性がある」と注意喚起した。

徳島県ではクラウドファンディングで500万円以上の支援を集め、駆除に使用。群馬県館林市では19年から1匹当たり50円または飲料水を交付し、19年は6648匹、20年は6249匹の成果を得ている。ライダーキックで、ピンチとなったふるさとの木々を守ろう。【鎌田直秀】

◆クビアカツヤカミキリ コウチュウ目カミキリムシ科ジャコウカミキリ属。主な生息地は中国、モンゴル、朝鮮半島、ベトナムなど。体長は25~40ミリ。光沢のある黒色の体で、明赤色の首回りが特徴。雄は雌よりも触角が長い。サクラ、ウメ、モモなどバラ科の樹木に産卵し、幼虫は生木を摂食し、木くずとフンが混ざったフラスを排出しながら2~3年かけて成長。6月から8月に、さなぎから成虫となり、交尾後に幹や樹皮の割れ目に産卵。1匹1000個近くを産卵することもある。寿命は1カ月程度で、越冬はしない。輸入木材と一緒に海外から運ばれた可能性が高い。別名はクロジャコウカミキリ。