神奈川・三浦半島の先端に位置する水族館「京急油壺マリンパーク」が30日、53年の歴史にピリオドを打って閉館する。施設の老朽化で、生き物を世話するには限界もあることからの終業となった。コロナ禍による巣ごもりで外出にも制限される反動からか、閉館まで1カ月となった9月上旬から来場者が増え始め、同施設を目指すマイカーの車列で渋滞が発生する盛況ぶりをみせている。

京浜急行が100%出資する水族館であることもあって、同線の三浦半島の終着駅・三崎口駅が最寄り駅となる。だが、改札口を出てから徒歩では約1時間を費やし、移動手段は京急系列の定期運行バスか自家用車になる。

マリンパークへは裏道もなく1本道で、駐車場は321台のスペースがあるが、京急グループ広報担当は「今年5月に閉館を発表してから少しずつ来館される方が出てきました。夏休みがピークかと思っていたら、9月に入って来館者が急激に増えて、駐車場はすぐに埋まり、マリンパークを先頭に渋滞が発生しておりました」と閉館間際の人気に戸惑っていた。

実際に現地を訪れると三崎口駅のマリンパーク行きのバス停には行列であふれていて「普段10~15分間隔で運行していますが、どの便も満員で状況をみて増便させている。今までこんなことはなかった」(京急バス三崎口営業所)。

マリンパークから約3・6キロ離れたバス停「引橋」までゆったりと進む渋滞は続いていた。残り1キロ地点には「およそ120台駐車待ちです」という最近取り付けられた看板まで設置されていた。

コロナ禍ということもあり、1日の来場者は2500人限定としている。記念に訪れたカップルは「地元のお魚が多くて良かったね」「こんなに楽しめるとは思わなかった。もっと早く来ていればねぇ」と顔を見合わせながら、閉館を惜しんでいた。【寺沢卓】

◆京急油壺マリンパーク 京急の創業70周年記念事業として神奈川県立三崎水産高校跡地に総工費約10億円で建設された。魚類と海の生物を自然のままの状態を再現して観察できるように、当時は珍しかった行動展示方式が採用された。初代館長は魚類学の権威で東大名誉教授の末広恭雄氏。末広館長との親交で昭和天皇も来館された。秋篠宮両ご夫妻も1989年9月、独身時代に訪れたことで「ロイヤルデートの現場」として取り上げられた。閉館後は25年をメドに大型レジャー施設として生まれ変わるが水族館の営業はしない方針。