将棋の現役最年長棋士、桐山清澄九段(74)が22日、大阪市の関西将棋会館で第35期竜王戦5組昇級者決定戦1回戦に臨み、伊奈祐介七段(46)に118手で敗れた。日本将棋連盟の規定により引退が決まった。

後日行われる5組残留決定戦が最後の対局となる。銀を巧みに使う渋い指し回しなどから「いぶし銀」と呼ばれてきた名棋士が55年以上の現役生活に別れを告げる。

勝てば現役続行、負ければ引退の大一番。桐山は、四間飛車を採用。一時は優勢を築いたが、終盤、伊奈の反撃に劣勢に立たされた。最後まで粘りを見せたが、投了した。

終局後、桐山は「これまで現役を続けてこられて、ありがたく思う」と静かに話し、ファンに「長いこと応援していただき、ありがとうございました。私なりに精いっぱい頑張ったが、思うような将棋を指せなくて申し訳ない」と話した。

日本将棋連盟の規定では、60歳以上の棋士が順位戦で最も下のC級2組からフリークラスへ陥落し、他の全棋戦でも出場資格を失うと定年で引退となる。

桐山は竜王戦以外の棋戦では出場資格を失っており竜王戦では5組に所属。2期までは5組で現役続行できる規定があるが、今期、桐山は竜王5組で3期目となり、現役続行の絶対条件は4組に昇級することだった。

桐山は奈良県出身。1966年4月、プロデビュー。順位戦では最上位のA級に14期在籍。タイトルは棋王1期、棋聖3期の通算4期、棋戦優勝は7回。これまで9人しか達成していない通算1000勝まで、あと4勝に迫っていた。豊島将之九段の師匠でもある。

将棋界は人工知能(AI)の全盛期となり、将棋ソフトで研究が普通になった。近年は、将棋ソフトでの研究も採り入れていた桐山は「戦法、指し方が変わってきたので、なかなかたいへんでした。以前の先入観が捨てきれなかった」と振り返った。一方で55年以上も現役を続けることができた秘訣(ひけつ)について「健康」を挙げ、「健康でないと長く続けられないので、注意をしていた」と明かした。